研究課題/領域番号 |
17H03282
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西村 悠樹 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (20549018)
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研究分担者 |
佐藤 訓志 大阪大学, 工学研究科, 講師 (60533643)
中村 文一 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 准教授 (70362837)
星野 健太 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10737498)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 確率システム / 非線形制御 / リャプノフ安定論 / 有限時間整定制御 / ラフパス解析 / 振動抑制制御 |
研究実績の概要 |
福祉ロボットやSiCインバータの制御など超スマート社会に必要な技術の多くは不規則振動に悩まされる。本研究の目的は,これら非線形システムの不規則振動を把握・制御するために,確率制御理論を通常の非線形制御理論と統合し,真に実用的なシステムノイズ除去・低減のための確率安定性理論を構築することである。具体的には,非線形確率システムの多岐にわたる特異な性質を定性的・定量的に解析し,実システムに対して適用が容易な非線形確率ロバスト制御を開発し,提案する理論の有用性を数値シミュレーションならびに各種実機実験で示すことを目的としている。 当該年度の実績は次の通りであった。1)非線形確率システムの安定論を「確定システムからの自然な拡張がなされた確率システムの安定論」とすべく,確率微分方程式にラフパス解析を適用してラフ微分方程式として定式化することにより,確率リャプノフ安定論を考え直した。2)有限時間安定化されている確定システムにガウス型白色雑音が印加された場合に,有限時間安定性が保たれているかどうかについて調査し,確率有限時間安定性を補償するための非線形状態フィードバック則を設計し,それが有効に働くことを理論的に示した。3)確率システムにおける特徴的な問題である,微分不可能な確率リャプノフ関数を許容することで確率安定論を改良した。4)確率有界安定化制御を非ホロノミックシステムに応用した。 また,非線形確率制御理論のシステムモデルから掘り下げて考察するために,シンポジウム『真なるダイナミクスの追求によるシステム制御理論の躍進を目指すシンポジウム』を開催し,12件の講演と26名の参加者により活発な討論が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の柱の一つである確率安定論の非平衡点への拡張については計画通りに進展している。確率有限時間安定性ならびに確率有界安定化についても順調に成果を上げることができた。確率安定論の非マルコフモデルへの拡張については,これを図るためにラフパス解析を導入することはできたが,非マルコフモデルへの拡張自体はまだ達成されていない。そのほか,概有界化と確率有界化にNSS(Noise-to-State Stability)解析の融合をすることで「どれくらいの大きさの空間にどれくらいの確率で留めておきたいか」という数値的な目標を達成するフィードバック制御則設計法を提案することや,複数のリャプノフ関数について各点で最小を取ることで大域的な漸近安定化制御則を導く最小射影法を確率システムに拡張することなどについては成果をまとめることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,確率安定論そのものについての「確定システムの安定論からの自然な拡張」を試みると同時に,実応用的観点から,本当に必要な確率安定性の定義を模索する。また,まだ達成できていない,概有界化と確率有界化にNSS(Noise-to-State Stability)解析の融合をすることで「どれくらいの大きさの空間にどれくらいの確率で留めておきたいか」という数値的な目標を達成するフィードバック制御則設計法を提案することや,複数のリャプノフ関数について各点で最小を取ることで大域的な漸近安定化制御則を導く最小射影法を確率システムに拡張することに,引き続き挑戦する。また,確率有限時間整定制御をより発展させ,目標値近傍で激しいチャタリングを発生させてしまう場合に,その現象を不規則振動として扱うことで確率リャプノフ安定論に基づいて補償する手法を提案する。そして,非整数ブラウン運動や遅延ブラウン運動など最先端の確率過程論をもとに工学的問題の実態に即した不規則振動のモデル化を行うことについて調査研究を行う。
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