研究課題/領域番号 |
17H03283
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
滑川 徹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30262554)
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研究分担者 |
牛房 義明 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (90343433)
向井 正和 工学院大学, 工学部, 准教授 (50404059)
小島 千昭 富山県立大学, 工学部, 講師 (00456162)
畑中 健志 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10452012)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御工学 / 大規模システム / 都市インフラ / Plug & Play制御 / 最適化 |
研究実績の概要 |
本年度得られた成果は以下の5点である。 (1)各市場参加者の需要量、供給量決定モデルとISOによる価格更新モデルを動的モデルで表現し、それらを相互接続した電力市場取引システムに対してPassivity-shortの概念に基づき安定性解析を行った。これにより、電力市場取引システムで導出された需要量、供給量、価格の値が社会全体の利益最大化を達成する最適解への収束を確認した。(2)ドライバ運転挙動を最適化問題として定式化し、道路境界をバリア関数を用いて表現し、非線形モデル予測制御による自動合流方法を構成した。これにより、他車両に関するセンサ情報にノイズが含まれる場合でも、合流が安全に達成可能であることを検証した。また交通シミュレータ上で、非線形モデル予測制御の実装を可能とした。(3)北九州市城野地区ゼロ・カーボン先進街区をフィールドにして、ゼロ・カーボンの達成状況を検証した。一部の世帯を対象に、エネルギー利用により生じたCO2の排出量と太陽光発電、燃料電池の創エネによるCO2削減量のデータを利用し、ゼロ・カーボン達成度を検証した。その結果、通年ではゼロ・カーボンの達成を確認した。(4)大規模・非均質な電力ネットワークを想定したネットワーク化非線形システムを考え、サブシステムが満たす受動性に基づき、全体システムが安定となるネットワーク条件を明確化した。また、この結果をネットワーク縮約モデルによって記述される電力ネットワークへと適用し、Plug&Play制御系設計に関する議論を行った。(5)交通シミュレータに、MATLAB/Simulinkおよび混合整数計画問題ソルバを連携させることで実時間のフィードバック制御・最適化機能を有する新たな交通シミュレータを開発し、ミクロ交通流モデルに基づくモデル予測型信号機制御およびマクロ交通流モデルに基づくサイバーフィジカル最適信号機制御を実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、「電力ネットワークの動的モデルの表現と最適化」に関しては、各市場参加者の需要量、供給量決定モデルとISOによる価格更新モデルを動的モデルで表現し、それらを相互接続した電力市場取引システムに対してPassivity-shortの概念に基づき安定性解析を行った。「交通システムの動的モデル表現と最適化」に関しては、ドライバ運転挙動を最適化問題として定式化し、道路境界をバリア関数を用いて表現し、非線形モデル予測制御による自動合流方法を構成した。これにより、他車両に関するセンサ情報にノイズが含まれる場合でも、合流が安全に達成可能であることを検証した。「大規模都市インフラシステムの費用便益分析」に関しては、北九州市城野地区ゼロ・カーボン先進街区をフィールドにして、ゼロ・カーボンの達成状況を検証した。一部の世帯を対象に、エネルギー利用により生じたCO2の排出量と太陽光発電、燃料電池の創エネによるCO2削減量のデータを利用し、ゼロ・カーボン達成度を検証した。「大規模都市インフラシステムの制御系設計とシミュレーション検証」については、大規模・非均質な電力ネットワークを想定したネットワーク化非線形システムを考え、サブシステムが満たす受動性に基づき、全体システムが安定となるネットワーク条件を明確化した。「異構造システムの結合とPlug & Play制御」については、交通シミュレータに、MATLAB/Simulinkおよび混合整数計画問題ソルバを連携させることで実時間のフィードバック制御・最適化機能を有する新たな交通シミュレータを開発し、サイバーフィジカル最適信号機制御を実装した。 以上により、目標である「大規模都市インフラシステムの Plug & Play 最適化の実現」に向け、おおむね順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 電力ネットワークの動的モデルの表現と最適化:電力ネットワークの物理ダイナミクスと需要家、供給者の動的な行動経済モデルを考慮した動的な電力価格決定メカニズムと経済的負荷配分と周波数制御を統合的に扱う制御問題に対して、ゲーム理論/制御理論に基づく統合的メカニズムデザインの構築と、検証を行う。 (2) 交通システムの動的モデル表現と最適化:これまでのドライバ挙動モデルは遅延を有する非線形システムで、信号や交通ルールは論理条件として扱っていたが、様々なパラメータが不明であるため、それらのパラメータを同定する。得られたモデルに対して、モデル予測制御やPlug & Play制御を行い、準リアル交通流シミュレータで検証する。 (3) 大規模都市インフラシステムの費用便益分析:都市システムの最適化を実現するための様々な技術要素の調査を行い、都市システム最適化の費用便益分析を行う。具体的には、都市システム最適化の実現のために、提案するPlug & Play制御モデルが社会実装される際の費用、便益を試算し、制御モデルの経済性を検討する。 (4) 大規模都市インフラシステムの制御系設計とシミュレーション検証:これまでに得られた大規模都市インフラシステムの受動性に基づく制御系設計の成果を、システムのネットワーク構造を陽に保存可能なデスクリプタ表現に基づく枠組みへと拡張する。さらに、提案制御系設計の枠組みの有効性をシミュレーション検証する。 (5) 異構造システムの結合とPlug & Play制御:物理と最適化を結合し、エージェント数変化に対するロバスト性を担保する受動性に基づく分散学習アルゴリズムの安定性、環境適応性、最適性、Plug & Play機能を理論的に明らかにする。また、交通システムのシミュレータに対して、提案アルゴリズムを実装し、Plug & Play機能の実践的な検証を実施する。
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