研究課題/領域番号 |
17H03285
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50436333)
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研究分担者 |
蔵重 勲 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 主任研究員 (20371461)
長井 宏平 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (00451790)
全 邦釘 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (60605955)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 初期高温履歴 / 異種材料界面 / 熱作用 / 時間依存変形 / 耐久性 |
研究実績の概要 |
初年度である平成29年度は,材齢初期の高温作用がモルタル,コンクリートの骨材界面の損傷をもたらす条件について多角的に検討を行った.まず,線膨張係数の異なるアルミナ,ガラスビーズ,鉛および川砂を骨材として用い,高温作用によるペーストと骨材界面の損傷を蛍光エポキシ樹脂含浸法によって観察し,モルタルの動弾性係数,圧縮強度の比較検討を行った.その結果,セメントペーストの線膨張係数より小さいアルミナは,セメントペーストの収縮を拘束し骨材間にひび割れを生じさせ,セメントペーストの線膨張係数より大きい鉛は,初期高温後の温度降下時にセメントペーストより大きく収縮し骨材界面に剥離が生じた.また,高温作用を受けたアルミナ,鉛を用いたモルタルの動弾性係数は,これらの界面損傷によって,高温作用がない場合に比べ,動弾性係数,材齢28日の圧縮強度が低下した. さらに,材齢初期の高温作用がコンクリートの骨材界面における損傷の評価と,それがコンクリートの動弾性係数,透気係数,乾燥収縮といった材料物性に与える影響を,温度履歴,セメント種類によって比較検討も行った.その結果,高炉セメントを用いたコンクリートは,材齢初期に高温を作用させると,普通ポルトランドセメントを用いた場合に比べ,骨材界面に多くの損傷を生じた.本実験の条件では,こうした界面損傷はコンクリートの動弾性係数の低下,透気係数及び乾燥収縮の増加をもたらすことが示唆された. DEFについては,亀甲状ひび割れが発生したインド鉄道の枕木のプレキャストコンクリートのコアを岩石学的分析したところ,DEFとASRの同時発生の可能性が示唆された.蒸気養生による初期の高温作用がDEFをもたらすと同時に,インドの高い気温,頻繁の降雨がASRを促進したと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した通り,初年度は,初期温度履歴に依存するコンクリートの異種材料界面の状態変化の検討ができた.また,動弾性係数による損傷レベルの評価,蛍光エポキシ樹脂を用いたマイクロクラック観察及び画像解析によるひび割れ密度分布などの評価も,当初の予定通り実施できている.高温蒸気養生による収縮挙動についても検討済みである.DEF発生についてもインドのPC枕木の分析が初年度に実施できた.
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今後の研究の推進方策 |
界面損傷に対する昇温・降温速度の影響は,平成29年度の検討範囲では明確に表れなかったが,損傷が発生するタイミングも影響すると考えられ,アコースティックエミッションなども活用しながら,昇温・降温速度の影響について再度検討を行う.また,高温養生後,常温で水中に浸漬してからの乾燥収縮は,骨材の界面損傷が著しいと,損傷がないものに比べ大きくなる傾向があり,そのメカニズムについての再度検討を行う.同時に,高温養生後のクリープについても検討を行い,乾燥,持続荷重作用下での界面損傷の進展,それが収縮,クリープに与える影響に関する検討を行う. また,インドの枕木の検討結果から,熱帯地域ではDEF,ASRの同時発生の可能性が示唆されたため,それぞれの現象進行と相互作用について検討する.タイ,スリランカの実構造物のコアも入手できれば,それらの分析も進める.また,RBSMによって,骨材とモルタルでそれぞれの膨張パターンを変えながら,ASRとDEFのひび割れの感度解析も進めており,岩石学的分析との整合性について検証する.
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