研究課題/領域番号 |
17H03290
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
村上 祐貴 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (70509166)
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研究分担者 |
井山 徹郎 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00452087)
池田 富士雄 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30353337)
外山 茂浩 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (60342507)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 打音点検 / 欠陥検知率 / 打撃動作 / 暗黙知 |
研究実績の概要 |
本研究では、熟達点検者の暗黙知である打音点検技能を可視化し、体系化することで熟達点検者(伝承者)から経験の浅い実務点検者(継承者)へのシームレスな打音点検技能獲得プロセスの体系化を図ることを目的とする。平成30年度では、実務経験者31名を対象に打撃プロファイル(打撃動作、打撃力、打撃面積、打撃の間隔、打撃のリズム等)を取得した。その結果、経験年数と欠陥検知率には明確な相関関係は認められず,打音点検の経験年数が欠陥検知率に及ぼす影響は小さいことが明らかとなり、単に経験年数を重ねても打音点検技能が向上しないことが明らかとなった。欠陥検知率が高い被験者は打撃の接触面積が大きく、加えて打撃力も大きいことが明らかとなった。欠陥検知率が高い被験者の打撃は欠陥検知率が低い被験者と比較して相対的に高周波成分を多く含んでおり、このことから打撃の接触時間が短いことが示唆された。点検用ハンマーの握り方においては,欠陥検知率が高い被験者は、親指の圧力が大きく、点検用ハンマーを親指で固定することで打撃の軌道を安定させ、これによって打撃面積が大きくなっている可能性が示唆された。 一方、画像解析を用いた打撃座標取得システムを構築したが、被験者の身体で打撃点が隠れてしまう場合があり、計測方法を含めて今後更なる検討が必要であった。 打音点検時の疲労軽減および動作アシストを目的とした装置を製作し、その検証を行った。装置着用時に上腕二頭筋および三角筋前部の筋電位の減少が認められ、打音動作である腕振り動作においても筋電位の減少が認められたが各被験者によって筋電位の減少率にばらつきがあり、更なる改善が必要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、熟達点検者の打撃動作を標準化することを目標としていたが、欠陥検知率に影響を及ぼす打撃属性は多岐に渡り、それらが相互に関係しており、打撃動作や打撃特性を標準化するまでには至らなかった。しかしながら、打撃力や打撃の接触面積などの欠陥検知率に影響を及ぼす重要な打撃属性が明らかになりつつあり、前年度取得した実務経験を有する被験者の打撃動作や打撃特性を自己組織化マップを用いて詳細に分析し、欠陥検知率に影響を及ぼす打撃特性の抽出を進めることで、本年度中には標準化が完了する予定である。また、打撃動作アシスト装置や打撃デバイスの開発も並行して進んでいる。これらの知見をまとめて、平成30年度は1編の査読付き学術論文を投稿し、掲載が確定していること、国内学会発表を4件行ったことから、研究の達成度は概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度までに取得した実務経験を有する被験者の打撃動作および打撃特性について、さらに詳細分析し、欠陥検知率の向上に資する打撃属性の抽出を進める。また、抽出した打撃属性に基づく、打音点検トレーニングシステムの開発と検証を実施する。初学者を対象に、トレーニング以前と以後の欠陥検知率の差異を評価指標とする。トレーニング後の各属性とトレーニング前の属性を比較し、改善の必要な打撃動作のみを重点的に実施できるトレーニング法を確立する。 並行して、昨年度開発した打撃動作の補助器具の改善を含む打音点検補助治具の開発を引き続き進める。打音点検ハンマーに代わる打撃デバイスは、打撃面積が欠陥検知率に大きな影響を及ぼすことが明らかとなっているから、打撃の接触面積が向上する機構を検討する。本年度中にプロトタイプを作製し、欠陥検知率の精度向上に繋がるかどうか検証を進める。 画像解析を利用した座標データ取得は上手くいかなかったため、本年度はエリアセンサーを利用する方式を検討している。既にプログラムは構築し、リアルタイムに座標が取得出来る段階であり、測定精度向上のための改良を行っている。
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