研究課題/領域番号 |
17H03296
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
二羽 淳一郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60164638)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンクリート構造 / 継手 / 継目部 / プレキャスト |
研究実績の概要 |
本研究は、プレキャスト技術を取り巻く諸問題の中でも、特にプレキャスト部材継目部での一体化の問題に着目し、基礎的な研究を展開するものである。 平成29年度は、モルタル充填式機械式継手(以下、スリーブと略記)を用いた系統的な実験を実施し、(a)スリーブと鉄筋単体の軸方向剛性の相違に起因する応力集中が、曲げ耐荷機構に及ぼす影響、(b)かぶり確保のために、スリーブ部を取り囲むせん断補強鉄筋を、スリーブ部を避け、スリーブ端部の鉄筋母材部に集約して配置した集約配筋法がせん断耐荷機構に及ぼす影響、について実験的に検討した。検討の結果、スリーブの使用により、曲げ耐力、せん断耐力が低下することはなく、一体的に作製された鉄筋コンクリートはりとスリーブを使用して作製されたプレキャストコンクリートはりの間には、耐力の相違は認められなかった。しかし、曲げあるいはせん断応力の作用により、プレキャスト継目部に開きが生じることが明らかとなった。 平成30年度は29年度の結果を受けて、プレキャスト継目部にひび割れが過早に発生することや、継目部自体が開くことを抑制することを目指した。そのため、継目部に特殊なプレテンションPC鋼材を配置しておき、継目部に局所的にプレストレスを与えることで、継目部の開きを抑え、耐久性の面からも、プレキャスト構造を有利なものとすることができる可能性を検討した。検討の結果、継目部に局所的に付与したプレストレスにより、継目部の曲げ挙動が改善され、過早なひび割れの発生や、継目部自体の開きを抑制できることを確認した。 最終年度の平成31年度(令和元年度)は、局所的にプレストレスを与えた継目部が、支間中央ではなくて、せん断スパンに存在するような、より一般的な状況を想定して研究を進める。そして最終的に、プレキャスト部材継目部の一体性評価に結びつけることとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、プレキャスト部材を一体化する際に、施工が容易で、強度や剛性も十分に期待できるモルタル充填式機械式継手(以下、スリーブと略記)を用いた系統的な実験を実施し、スリーブと鉄筋単体の軸方向剛性の相違に起因する応力集中が曲げ耐荷機構に及ぼす影響、かぶり確保のために、スリーブ部を取り囲むせん断補強鉄筋を、スリーブ部を避けて、スリーブ端部の鉄筋母材部に集約して配置した集約配筋法がせん断耐荷機構に及ぼす影響、について実験的に検討した。検討の結果、スリーブの使用によって、曲げ耐力、せん断耐力が低下することはなく、一体的に作製された鉄筋コンクリートはりとスリーブを用いて作製されたプレキャストコンクリートはりの耐力は同等であることを確認した。 平成30年度は、プレキャスト部材同士の継目部の問題に取り組んだ。それは、プレキャスト継目部には曲げあるいはせん断応力の作用により、過早なひび割れや開きが生じるためである。このため、特殊なプレテンション鋼材を継目部に配置しておき、これによって継目部に局所的なプレストレスを与えることにした。検討の結果、継目部に局所的に付与したプレストレスにより、継目部での過早なひび割れの発生や継目部自体の開きを十分に抑制できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は最終年度となる。当初の予定では、平成30年度は、はり部材ではなく、柱部材を対象に、プレキャスト部材継目部の一体性に関する検討を行うことを計画していた。しかしながら、スリーブ継手を使用した場合であっても、プレキャスト部材継目部の開きは抑制できず、構造体としての耐久性の観点からはむしろこの問題の解決が急を要するものと考えられた。このため、平成30年度は継目部に局所的なプレストレスを与えることにより、継目部における過早なひび割れの発生や、継目部自体の開きを抑え、安全性のみならず、耐久性の面からもプレキャスト構造を有利なものとすることができる可能性を検討することとした。そして検討の結果、継目部に局所的に付与したプレストレスにより、継目部での過早なひび割れの発生や継目部自体の開きを、十分に抑制できることを確認した。 そこで最終年度である平成31年度(令和元年度)は、継目部での局所的なプレストレスによる継目部でのひび割れ挙動の改善に重点をおき、30年度で行った支間中央部に継目部を有するプレキャスト構造だけでなく、継目部がせん断スパンに存在するような、より一般的な状況を想定して、そこでの局所プレストレスの効果に集中して研究を進める。そして最終的に、プレキャスト継目部の一体性の実現を目指すこととする。
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