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2018 年度 実績報告書

北海道周辺海域におけるメタンハイドレートの生成メカニズムと資源化アプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 17H03300
研究機関北見工業大学

研究代表者

山下 聡  北見工業大学, 工学部, 教授 (00174673)

研究分担者 仁科 健二  地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部地質研究所, 研究主査 (40446373)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードメタンハイドレート / 海洋探査 / 海洋資源 / 地盤工学 / 物性実験
研究実績の概要

北海道周辺海域において,3回の海洋調査を行い,コアリングによる海底堆積物の採取と分析,重力式コーン貫入試験(CPT)による海底地盤の強度評価等を行った。調査は,北海道立総合研究機構稚内水産試験場調査船「北洋丸」,釧路水産試験場調査船「北辰丸」,北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」を利用して,稚内沖日本海,網走沖オホーツク海,十勝沖太平洋において行った。稚内沖では海底からのガス湧出を音響測深器によって観測し,約60地点で湧出を確認した。また,網走沖では約70地点で確認した。網走沖では,新たな地点でメタンハイドレート(MH)の採取に成功した。網走沖では,過去の調査と併せて4地点でMHが採取されており,表層型MHが広く分布していることが示唆された。これらに加えて海底ガスの組成を陸域のガスの特性と対照するために,内陸湧出する温泉付随ガスの採取,陸域の地質概査を実施した。
海底地盤強度を直接測定するために,コアリングにより試料採取を行った同一地点でCPT試験を行った。その結果,ガスの濃度が低い試料では,CPT試験結果と船上試験結果がほぼ同程度の値を示したのに対し,ガス濃度の高い試料では,CPT試験結果の方が高い値を示した。したがって,簡易な重力式CPT試験により試料の乱れの影響のない原位置強度の推定が可能であることがわかった。
これまで,海底堆積土の採取は重力式コアラーによって行っていた。試料を採取するためには,コアラーを海底表層近くから自由落下させることが必要であるが,使用する船舶の設備によっては一定速での垂下により貫入採取せざる負えない場合がある。そこで,水圧式コアラーを国内では初めて製作し実用化した。従来の重力式コアラーよりも効率的な試料採取が可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2年間の主たる研究実施計画は,1)道総研調査船が過去の定期観測で取得した北海道周辺海域全体での計量魚群探知機データの解析,2)稚内沖から網走沖に至るオホーツク海における海洋調査,3)網走沖オホーツク海でのROVによる海底観測,4)原位置CPT試験による海底地盤強度の測定,5)水圧式コアラーの開発と性能評価であった。
1)のデータ解析に関しては,過去10年程度の定期観測で取得した北海道周辺海域全体での計量魚群探知機データの解析を行い,定期観測航路上のみではあるが北海道周辺海域の広範囲に渡って海底からガスが湧出していることが確認することができている。2)の海洋調査に関しては,オホーツク海のみならず稚内沖日本海や十勝沖太平洋においても海洋調査を行い,コアリングによる試料採取と分析,CPT試験等を行った。調査海域は当初の予定海域以外にも拡げることができている。3)のROV調査に関しては,網走沖の2地点において潜航調査を当初の計画通りに行うことができている。調査では,湧出ガスを直接採取することに成功するとともに,カニ類や貝類の生物群集とメタンとの関係性なども明らかにされた。4)のCPT試験に関しては,コアリングによる採取試料でガスの濃度が低い試料では,CPT試験結果と船上での力学試験結果がほぼ同程度の値を示したのに対し,ガス濃度の高い試料では,CPT試験結果の方が高い値を示した。したがって,簡易な重力式CPT試験により試料の乱れの影響のない原位置強度の推定が可能であることが示された。5)のコアラーの開発に関しては,コアラー上部に空気タンクを備えた水圧式コアラーを国内では初めて製作し実用化した。従来の重力式コアラーよりも効率的な試料採取が可能となった。
以上のことを総合的に判断して,「本研究課題はおおむね順調に進展している」と自己評価した。

今後の研究の推進方策

オホーツク海網走沖のみならず北海道周辺海域には広域的に表層型MHが存在する可能性があることがわかってきた。今後は,調査範囲をさらに広げ,広範囲でのMHの分布状況や生成環境の解明を行う。また,広域的なメタンガス生成メカニズムを探るために,陸域におけるガスの採取分析も継続的に行う。
海洋調査は,前年度の調査でガスプルームが観測されている稚内沖日本海,前年度の音響調査で特異地形が認められた網走沖オホーツク海,過去の調査でメタンハイドレートの存在の可能性を指摘した十勝沖太平洋等において実施予定である。調査には,前年度と同様に各水産試験場の漁業調査船や北海道大学の練習船を利用する。
稚内沖の調査では稚内水試の調査船を使用するが,これまでウインチの性能によりMHが存在できる水深400m程度以深でのコアリングができなかった。今年度は,ウインチの性能向上を図り,MH存在水深でのコアリングを実施する。また,各調査でのコアリングには,前年度に開発した国内初の採取性能の高い水圧式コアラーを使用する。
海底地盤の安定性評価に必要な海底地盤強度の把握は,原位置CPT試験によって行うが,MHそのものの強度を把握するために,採取直後のMHの強度測定を試行的に実施し,MHを賦存する海底地盤の安定性評価への適用性を検討する。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] 陸水学研究所シベリア支局/モスクワ州立大学(ロシア連邦)

    • 国名
      ロシア連邦
    • 外国機関名
      陸水学研究所シベリア支局/モスクワ州立大学
  • [雑誌論文] 北海道周辺海域海底地盤における重力式コーン貫入試験2019

    • 著者名/発表者名
      渋谷義顕,山下聡,八久保晶弘,小西正朗,坂上寛敏,南尚嗣,仁科健二
    • 雑誌名

      地盤工学会北海道支部技術報告集

      巻: 59 ページ: 85~92

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hydrogen and oxygen isotopic anomalies in pore waters suggesting clay mineral dehydration at gas hydrate-bearing Kedr mud volcano, southern Lake Baikal, Russia2018

    • 著者名/発表者名
      Minami Hirotsugu、Hachikubo Akihiro、Yamashita Satoshi、Sakagami Hirotoshi、Kasashima Ryo、Konishi Masaaki、Shoji Hitoshi、Takahashi Nobuo、Pogodaeva Tatyana、Krylov Alexey、Khabuev Andrey、Kazakov Andrey、De Batist Marc、Naudts Lieven、Chensky Alexandr、Gubin Nikita、Khlystov Oleg
    • 雑誌名

      Geo-Marine Letters

      巻: 38 ページ: 403~415

    • DOI

      10.1007/s00367-018-0542-x

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] GRAVITY TYPE CONE PENETRATION TEST ON SEABED OFF EASTERN HOKKAIDO, THE SEA OF OKHOTSK2018

    • 著者名/発表者名
      SHIBUYA Yoshiaki、YAMASHITA Satoshi、HACHIKUBO Akihiro、KONISHI Masaaki、SAKAGAMI Hirotoshi、MINAMI Naotsugu、NISHINA Kenji、UCHIDA Yasuhito
    • 雑誌名

      Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. B3 (Ocean Engineering)

      巻: 74 ページ: I_868~I_873

    • DOI

      10.2208/jscejoe.74.I_868

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 道東沖海底地盤における原位置コーン貫入試験2019

    • 著者名/発表者名
      渋谷義顕,山下聡,八久保晶弘,小西正朗,坂上寛敏,南尚嗣,仁科健二,美坂正,板谷和彦
    • 学会等名
      第53回地盤工学研究発表会
  • [学会発表] 網走沖海底表層ガスハイドレート含有堆積物コア間隙水の化学分析2019

    • 著者名/発表者名
      杉本和樹, 坂上寛敏, 山下聡, 八久保晶弘, 小西正朗, 南尚嗣, 仁科健二, 坂口健司
    • 学会等名
      化学系学協会北海道支部2019年冬季研究発表会
  • [学会発表] オホーツク海網走沖のガス湧出域における ROV調査と湧出ガス量の見積もり2018

    • 著者名/発表者名
      丹羽 達哉、山下 聡、八久保 晶弘、小西 正朗、坂上 寛敏、仁科 健二、南 尚嗣
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] 道東沖オホーツク海海底地盤における重力式コーン貫入試験2018

    • 著者名/発表者名
      渋谷義顕,山下聡,八久保晶弘,小西正朗,坂上寛敏,南尚嗣,仁科健二,内田康人
    • 学会等名
      第43回海洋開発シンポジウム
  • [学会発表] 表層型メタンハイドレートを対象とした海底地盤調査2018

    • 著者名/発表者名
      山下聡
    • 学会等名
      平成30年度地盤と防災・環境に関するシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 網走沖海底湧出ガスを用いた天然ガスハイドレートの相図2018

    • 著者名/発表者名
      岡本陵, 菊池優樹, 木田真人, 八久保晶弘, 百武欣二, 小西正朗, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡
    • 学会等名
      雪氷研究大会2018・札幌
  • [学会発表] 低温菌シンプル酵素触媒の宿主とその培養に関する基盤的解析2018

    • 著者名/発表者名
      鴨木明子, 田島誉久, 小西正朗, 八久保晶弘, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡, 中島田豊, 加藤純一
    • 学会等名
      第70回日本生物工学会大会
  • [学会発表] 海底より採取したメタンハイドレートのX線CT観察2018

    • 著者名/発表者名
      竹谷敏, 八久保晶弘, 山下聡, 南尚嗣, 坂上寛敏, 米山明男, 兵藤一行, 武田徹
    • 学会等名
      日本エネルギー学会第27回大会
  • [学会発表] 網走沖ガスハイドレートの起源に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      小西正朗,須川和生,八久保晶弘,坂上寛敏,南尚嗣,山下聡
    • 学会等名
      日本生物工学会2018年度生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナー
  • [学会発表] サハリン沖及び網走沖ガスハイドレートサイトにおける菌叢解析2018

    • 著者名/発表者名
      須川和生,八久保晶弘,坂上寛敏,南尚嗣,山下聡,髙橋信夫,庄子仁,Y. K. Jin,B. Baranov,A. Obzhirov, ,小西正朗
    • 学会等名
      日本生物工学会2018年度生物工学若手研究者の集い(若手会)夏のセミナー
  • [学会発表] 低温菌を活用したシンプル酵素触媒構築のための基盤技術の開発2018

    • 著者名/発表者名
      鴨木明子, 田島誉久, 小西正朗, 八久保晶弘, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡, 中島田豊, 加藤純一
    • 学会等名
      日本農芸化学会中四国支部第51回講演会
  • [学会発表] サハリン沖海底堆積物中のガスハイドレート埋没コアの同位体ガスならびに微生物組成解析2018

    • 著者名/発表者名
      須川和生、八久保晶弘、坂上寛敏、南尚嗣、山下聡、高橋信夫、庄子仁、Jin Young、Baranov Boris、Obzhirov Anatoly、小西正朗
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] サハリン沖海底堆積物中のガスハイドレート埋没コアの同位体ガスならびに微生物組成解析2018

    • 著者名/発表者名
      須川和生, 八久保晶弘, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡, 高橋信夫, 庄子仁, Y. K. Jin, B. Baranov, A. Obzhirov, 小西正朗
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] 海底・湖底におけるメタン生成環境の比較―オホーツク海、日本海およびバイカル湖の例―2018

    • 著者名/発表者名
      菊池優樹, 八久保晶弘, O. Khlystov, G. Kalmychkov, M. De Batist, Y. K. Jin, A. Obzhirov, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] 道北陸域の温泉ガスと日本海タタールトラフのハイドレート包接ガスとの類似性2018

    • 著者名/発表者名
      小関貴弘, 八久保晶弘, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡, 仁科健二
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] バイカル湖南湖盆Kedr泥火山の天然ガスハイドレートのエタン濃縮過程2018

    • 著者名/発表者名
      八久保晶弘, 柿崎圭人, 奥田駿, O. Khlystov, G. Kalmychkov, A. Manakov, M. De Batist, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [学会発表] オホーツク海網走沖ROV調査で得られた海底湧出ガスの特徴2018

    • 著者名/発表者名
      八久保晶弘, 柿崎圭人, 松田純平, 百武欣二, 小西正朗, 坂上寛敏, 南尚嗣, 山下聡, 仁科健二
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2018年大会
  • [備考] 北見工業大学 環境・エネルギー研究推進センター

    • URL

      http://www-ner.office.kitami-it.ac.jp/

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公開日: 2019-12-27  

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