研究課題/領域番号 |
17H03301
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川本 健 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50292644)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベントナイト / 微視的構造 / 物質移動 / 放射性廃棄物 / 地層処分 |
研究実績の概要 |
放射性廃棄物地層処分において廃棄物収納容器と周辺地盤の間を充填する材料として、ベントナイトの利用が国内外で検討されている。ベントナイトの吸水にともなう膨潤・均質化(内部密度の平均化)は、媒体内の間隙構造や密度分布の変化を引き起こし、媒体内の物質移動を評価する際に必要となる各種物質移動係数(飽和・不飽和透水係数、ガス拡散係数、通気係数、熱伝導率、熱容量、溶質拡散係数)に大きな影響を与える。本研究ではベントナイト材料の微視的構造観察ならびに各種物質移動係数(水、熱、ガス、溶質)の評価及びその数理モデルを構築することを目的とし、研究を進めている。 研究2年度は、顆粒状ベントナイト試料を用いて、「1。 マイクロフォーカスX線CTを用いたベントナイトの微視的構造観察と内部構造パラメータの定量的解析」の一部を継続するとともに、「2。膨潤・均質化過程におけるベントナイトの物質移動係数の測定」の相対湿度90%および95%における顆粒状ベントナイト試料(相対湿度調整試料)の膨潤・均質化過程における内部微視的構造観察及び物質移動係数測定に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FE-GBM相対湿度調整試料は湿潤に伴い、粗粒分の輝度低下が確認でき、これは粗粒分の湿潤・膨張による乾燥密度低下に起因し、同膨張により細粒分が締固められ、粗粒分との密度差が小さくなることで湿潤による均質化が生じることがMFXCT観察より推定された。また、物質移動係数については、同一気相率における相対ガス拡散係数が、風乾状態の乾燥密度調整サンプルと比較し高くなることが示された。これは、粗粒分の湿潤より、屈曲性の高い粗粒子内のガス拡散経路が失われ、屈曲性の低い粒子間のガス拡散経路が卓越したためだと考えられる。同一体積含水率に対する熱伝導率の変化についても両サンプルで違いが見られ固相率の変化をより強く受けることが確認された。これは体積含水率の増加は熱伝導率の上昇に寄与するものの、固相の増加によるベントナイト粒子の接触面積の増加の影響には及ばないためだと考えられる。 一方、OK-GBMでは明確な微細構造変化を確認できず、この要因としてはFE-GBMと比較し、吸水量が低いこと、および粗粒分の密度が低いことが考えられた。物質移動係数についても風乾状態との違いは確認されず、相対ガス拡散係数は気相率、熱伝導率は体積含水率の変化に支配されることが確認された。 これら2年度の知見は、初年度の風乾試料での解析結果も含め、最終年度の「微視的構造解析に基づく顆粒状ベントナイトの各種物質移動係数(水、熱、ガス)の数理モデルの構築」に有効に活用される。
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今後の研究の推進方策 |
1. マイクロフォーカスX線CTを用いたベントナイトの微視的構造解析(膨潤・均質化過程)と物質移動係数の測定 初年度は二種類の顆粒状ベントナイト試料(風乾条件)に対してマイクロフォーカスX線CT(MFXCT)装置を用いて内部微視的構造観察を行い、物質移動係数としてガス拡散係数・通気係数・熱伝導率・熱容量を測定した。第2年度は、相対湿度90%および95%における膨潤・均質化過程における内部微視的構造観察及び物質移動係数測定に着手した。最終年度も、第2年度の測定を継続し、より詳細なデータ収集を行う。
2.微視的構造解析に基づく顆粒状ベントナイトの各種物質移動係数(水、熱、ガス)の数理モデルの構築 これまでに得られた微視的構造解析及び物質移動係数を用いて、粒状ベントナイトにおける各種物質移動係数(水、熱、ガス)の数理モデルの構築を目指す。具体的には、既往の物質移動係数数理モデルをベースに、各種物質移動係数を物質流動相(水の場合は液相、ガスの場合は気相)の関数として見なし、ベントナイト特有の有効間隙率や微細間隙構造パラメータ特性を組み込んだ数理モデルの構築を行い、その有効性を本研究ならびにた研究で得られたデータを用いて検証する。
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