研究課題/領域番号 |
17H03304
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
張 鋒 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70303691)
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研究分担者 |
阪口 秀 国立研究開発法人海洋研究開発機構, その他, 研究員 (10235145)
山本 由弦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 分野長代理 (10435753)
岩井 裕正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80756908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋工学 / 地質学 / 土壌圏現象 / 地震工学 / 解析・評価 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、主にIODPで得た南海トラフのプロトデコルマ層準のサンプルを用いて、申請者らが開発した特殊載荷装置で種々の複合荷重による要素試験を行い、海底岩石の巨視的力学挙動を調べた。サンプルは極めて貴重であるため、今までの準備試験で一度も使っていないが、綿密な準備試験を経て、本試験では、ほぼ期待通りの精度で実験結果を得た。それに加え、平行してSEMによる地質材料の微細構造観察および帯磁率異方性の変化も調べた。 プロトデコルマ層準である12H-02と試料18H-06を用いた定ひずみ速度圧密試験(K0載荷試験)の結果より,セメンテーションを有していることが確認された。また圧密降伏応力付近で動的載荷を作用すると,塑性変位は発生するが帯磁率異方性に変化は見られなかった。一方,静的・動的荷重を問わず異方性が発達し始める閾値が存在することが確認された。ただし、この閾値をより明確にするために、種々の載荷試験を行う必要があるが,使える試料の本数が限られていたため、追加試料が必要であり、現在サンプルリクエストを実施しており、追加試料が入手次第、試験を実施していく予定である。さらに、高精度海底岩盤力学モデルの要素レベルでの検証も実施しているが、K0載荷試験より、三軸圧縮試験の試料サイズはK0載荷試験に用いられる試料のサイズより5倍も大きいため、現在のところたった1本の試料を用いた試験しか行えていないため、データの蓄積が求められる(H30年度で実施する予定)。尚、研究成果は地盤工学会年次発表会で2編の論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もちろんデコルマ形成メカニズムの完全解明までには至っていないが、予定どおりの成果が得られている。継続的に各種要素試験を実施していけば、分析の精度が向上し、結論に結びつくデータの蓄積が可能となる。次年度の研究計画には上手く継続できる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成29年度で実施した南海トラフで採集したプロトデコルマ層準を用いた要素試験を継続的に行い、岩石の巨視的力学挙動を調べる。また、平行してSEMによる地質材料の微細構造観察および帯磁率異方性の変化も継続的に調べ、いままで得られた結果の再現性を確かめる。 (2) 幅20キロ、深さ2キロの海溝付近沈み込み帯の浅部岩盤を解析範囲とし、プロトデコルマ層準からデコルマ層準へ変貌する過程において、全ての外力(連続的な静的せん断と各種瞬間的な動的荷重)をありのままで解析範囲内の岩盤に作用させ、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む過程(2~20万年)を時系列的に再現する。この境界値問題の数値実験においては、用いられる地盤材料の構成式パラメータは全て要素試験で決定し、解析過程においては一切値を変更しない。この数値実験で、研究目的で挙げられた海溝付近で観察された三つの‘謎’を解き明かす。 (3) 精巧な海底岩盤力学モデルを確立する手法として、数値実験がもっとも現実的なものと考えられる。上述する三つの‘謎’は境界値問題であり、要素試験だけでは説明しきれない。一方、この数値実験で行う様々な静的・動的FEM連動解析はあくまでも巨視的力学挙動を反映するものであり、微視的構造変化との関係は直接に得られないため、常に要素レベルで巨視的・微視的挙動を比較する。ただし、検証に必要な時系列的な情報が少ない上、地質年代効果の検証もほとんど不可能であるため、現時点では、モデル確立の第1歩として、上述した境界値問題の定性的な表現を可能にする。
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