研究課題/領域番号 |
17H03305
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
前田 健一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50271648)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 河川堤防 / 豪雨・洪水 / 浸透 / 高水位継続時間 / パイピング / 噴砂 / 局所化 / 液状化 |
研究実績の概要 |
層厚による検討からパイピングが進展する可能性がある被覆土層厚の条件式が地盤材料と堤体形状で表せることが分かった.さらに,行き止まりや透水層の露出の有無,二層の透水係数の比によって危険度が大きく変化し,これらは重要な評価項目になることが分かった. また釜段・月の輪工を用いた漏水対策型水防工法は噴砂速度を低下させ緩みの進展を抑制する効果があるが,基礎地盤条件によっては対策工の効果が十分に発揮されないことが分かった.さらに噴砂が法尻で発生すると堤体直下の土粒子が流出しパイピングを助長する可能性がある.また,噴砂を完全に塞ぐことや,噴砂単体に対策工を施すことで他の箇所で噴砂が発生・活性化してしまう危険性も示された.そこで対策すべき噴砂と対策範囲について水防活動の三原則を提案した.1) 噴砂を堤体に近づけない.(法尻付近の噴砂を優先)2) 噴砂は完全に塞がない.3) 法尻付近の群生した噴砂は大きく囲う. 実験・数値解析結果及び現地調査による検討結果を加えた河川堤防のパイピング破壊に対する簡易な点検フローを示すことに成功した.このフローは堤体の強度が比較的高い条件の下,まず最重要項目である堤体を支持する基礎地盤構造(層構造,被覆土層厚,透水係数比,行き止まり距離)について評価し,その後,堤内・堤外の地形について評価する流れとなっている.また,本稿で検討した項目から現時点で既知の範囲で矢部川の決壊箇所と無被災箇所および常呂川の噴砂箇所のデータをまとめ,簡易点検フローに従い各箇所ごとに危険度を分類することに成功した.その結果,被災箇所は無被災箇所に比べ危険度が高いことが示され,本稿の検討項目は現地レベルでも評価できると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
いままで発見されていないメカニズムを解明できたことから,来年度以降に検討予定であった。水防工法の効果発揮メカニズムについても新たな知見を得ることができた。当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)【基礎地盤】マルチスケールで捉えたパイピングの発生・発達の統一的メカニズムの解明: 開発する三次元可視化手法の改善(消耗品などの購入)を行うとおもに、サイズの異なる実験や数値解析(流体連成のDEM)を行った結果からメカニズムの検証・改善、パイピング理論の構築を行う。高速ビデオを購入し、多方向撮影し画像解析を行う。 2)【堤防構造物】変状発生から破堤に至るダイナミクスの体系化と相似則の確立: 縦断方向(河川の流れ方向)に長い三次元的堤防実験が可能な模型実験土槽を作成し、変状の縦断方向の規模についても検討を進める。また、相似側や支配パラメータの検証と改良を行う。堤防変状を計測するためのレーザ変位計を追加購入と間隙水圧計を追加購入する。流れの線形・非線形安定解析などを用いて、堤内地形の凹凸(不陸)も含めた漏水・噴砂の幾何学条件を解明することで、実堤防の支配パラメータの導出を行う。 3)【堤防構造物】水位履歴による浸透劣化を考慮した破堤に至るダイナミクスの体系化 と同様に、三次元的考察を展開する。長期挙動の数値計算用GPGPUボードの追加を図る。 4)【堤防構造物】堤防の維持管理の効率化:a.[弱部の抽出方法の提案]: 研究項目1)~3)までの結果を踏まえ、堤防の弱部の抽出やそれに必要な調査方法およびその結果の解釈方法を提案する。事例分析も行い検証・改善する。b.[水防工法・対策工の科学の解明]:以上の模型実験や数値解析の結果を基に、伝統的な水防工法「月の輪工」、「釜段工」、対策工のドレーンやウェルドレーンの効果発揮のメカニズムと適用範囲を解明する。見逃されていた効果を利用し、より効果的な破壊抑制方法の提案を支援する。水防工法や対策工に関する模型を作成する。事例分析も行い検証・改善する。
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