研究課題/領域番号 |
17H03312
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 修三 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40172663)
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研究分担者 |
入江 政安 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00379116)
中谷 祐介 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20635164)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境水理学 / 閉鎖性海域 / 水質汚濁 / 流動制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、沿岸域に立地する事業所の取放水や排水を積極的に利用した総合的な流動制御により、閉鎖性水域の水交換を促進し、劣化した水環境の改善を目指すものである。本年度は、以下のような研究成果が得られた。 (1) 大阪湾東部の堺港に位置する発電所周辺海域の流況・水質調査を実施した。調査は取水口が位置し親水空間の整備が進められている堺旧港側の海域と放水口が設置されている浜寺水路側の海域で実施した。堺旧港側では、水質定点観測および船舶を用いた流況・水質の現況調査を、貧酸素水塊が発達する8月から解消する11月まで実施した。観測の結果、この港湾域の底層約4m以深には10月まで貧酸素水塊が滞留し、発電所冷却水として高栄養塩濃度の貧酸素水が取水されていることがわかった。また、温排水が放流されている浜寺水路側の海域で実施した12月の水質調査結果から、放流口前面海域では水温・栄養塩濃度の上昇や貧酸素水の影響が見られたが、混合拡散による水質改善効果は認められなかった。 (2) 昨年度実施したシミュレーションの沿岸地形データの精緻化と各種パラメータの修正を行い、発電所周辺海域の流動・水質シミュレーションを実施した。また、深層学習手法による水質計算の高度化も検討した。その結果、30m3/s程度の放流量では、潮流が卓越するこの海域の残差流構造には大きな変化は見られなかった。しかし、放流口を港域奥に変更することにより、停滞性の強い浜寺水路の流動を促進し、港内の栄養塩を港外に流出させる効果も認められた。さらに浜寺水路底層から放流した場合は、鉛直混合が促進され溶存酸素濃度に一部改善が見られ、さらに冷却水取水後に曝気して温排水を放流した場合には、より改善効果が大きくなり、放流水の水質が水温にもまして海域の水環境改善に大きな影響を及ぼすことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北部港湾域の解析がほぼ完了し、本年度は東部港湾域の調査解析を行った。現地調査において、9月に大阪湾を直撃した台風21号により計器流出が発生したが、11月に計器の回収ができデータ損失も最小限に抑えることができた。 昨年度より精緻な地形データを作成し流動シミュレーションの精度向上が図られ、種々のケース計算と詳細な影響解析が可能となった。当初予定していた3カ所の発電所の取放水の影響については、ほぼシミュレーションが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である次年度は、港域の水交換をより定量的に把握するために、残差流解析に加え水粒子挙動シミュレーションにより栄養塩等の物質輸送解析も行い、発電所をはじめとする事業所等の水輸送システムを活用した実現可能な水環境改善策の検討を行う。 また、大阪湾で実施または審査中のアセスメント関係の資料を収集し、海域の環境改善の視点から環境影響評価の課題と改善策を検討する。
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