研究課題/領域番号 |
17H03316
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高橋 智幸 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40261599)
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研究分担者 |
奥村 与志弘 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (80514124)
河野 和宏 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60581238)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 深層学習 / 転移学習 / 多数津波シナリオ / 津波数値モデル / 津波観測 |
研究実績の概要 |
(1)教師データセットの作成 南海トラフ周辺海域を単純化し、岸沖方向に水深5000mの一様水深領域54km、急勾配領域81kmおよび緩勾配領域189kmが接続されたモデル地形を作成した。沿岸方向は一様水深とし、945kmの領域を作成した。津波観測装置としてGPS波浪計8基とDONET12基を想定して、観測地点(計算上は出力地点)を配置した。地震シナリオとしてはマグニチュード8.0から8.9までの10種類の規模を想定し、特性化波源モデルを設定した。地震発生の不確かさを考慮するため、断層長は200から750kmまでの12ケース、断層の配置は37ケース、断層深さは1から5kmの5ケース、傾斜角は20から30度の6ケース、すべり方向は80から120度の5ケースを設定した。なお、断層幅は断層長の1/2を標準とし、地震発生層より大きくなる場合は地震発生層で打ち切った。すべり量は相似則を用いて断層長から計算し、走向は南海トラフを模擬して270度とした。以上、5500ケースの断層モデルを想定し、全ての断層モデルについてMansinha and Smylie(1972)の地殻変動理論に基づき津波初期波形を計算した。これらを外力条件として津波伝播シミュレーションを実施して、各観測機器で測定されると予想される模擬観測データを求め、機械学習における教師データセットとした。 (2)機械学習モデルの作成および精度検証 Convolution Neural Networkを用い、活性化関数としてReLU関数を採用し、過学習を抑制するためにData augmentationとDropoutを使用した。教師データ数を約1000から4000まで変化させて、断層長、断層深さ、傾斜角およびすべり方向について学習させ、残りのデータで精度検証を行った。なお、教師データ数の少なさを補うため、転移学習を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における最重要の研究目的は津波波源推定ニューラルネットワークの構築である。そのために今年度は教師データセットの作成を行った。その際、一般的な機械学習に関する研究で使用されているような膨大なデータセット(例えば、AlexNetでは1.2百万)の準備が困難であることがわかってきた。この問題を解決するための方法としては、公開されているビッグデータを用いた転移学習が考えられるため、津波波源推定ニューラルネットワークにおける転移学習の有効性を急ぎ確認することが重要であると判断した。そこで、次年度に実施する予定であった津波波源推定に対する機械学習の適用可能性の分析の一部を前倒しで開始した。そのため、今年度に実施する予定であった人的・物的被害の算定に十分な時間をかけることができなかった。すなわち、今年度に実施する予定であった一部の研究を次年度に延期し、次年度に実施する予定であった一部の研究を今年度に実施した。研究の順番を一部変更したが、研究内容は計画通りであり、研究全体としては順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は単純な地形モデル(南海トラフ周辺海域を一様水深・一様勾配でモデル化)と地震モデル(巨視的パラメータのみを設定した特性化波源モデル)から得られた教師データを用いて、津波波源推定ニューラルネットワークを構築した。今後は、より実際的かつ高性能な津波波源推定ニューラルネットワークの構築を目指して、特性化波源モデルに微視的パラメータを設定し、波源不均質性を考慮する。さらに、地形モデルについては、南海トラフ海域の実地形を使用する。
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