研究課題/領域番号 |
17H03323
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
宮城 俊彦 岐阜大学, 工学部, 特任教授 (20092968)
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研究分担者 |
倉内 文孝 岐阜大学, 工学部, 教授 (10263104)
應 江黔 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (30242738)
高木 朗義 岐阜大学, 工学部, 教授 (30322134)
杉浦 聡志 岐阜大学, 工学部, 助教 (30648051)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経路選択行動 / ゲーム理論 / 動的交通量配分 / 交通流特性 / 強化学習 / 深層学習 / 自動走行支援システム / 便益計測 |
研究実績の概要 |
成30年度は,漸近的最適応答(ABR)アルゴリズムの深化を目的に粒子交通流シミュレーションモデルにおける深層学習を取り入れる方法を探るとともに交通パフォーマンス特性の分析に関しても深層学習を用いた渋滞予測の可能性について研究を進めた.以下にその成果を要約する. (1)漸近的最適応答モデルと深層学習の結合:漸近的最適応答(ABR)アルゴリズムは認識誤差の確率分布を仮定しないノンパラメトリックモデルである.このことは経路選択確率,出発時刻帯選択確率を求めるのに説明変数を加えた形でモデル化するのを妨げている.一方,深層学習(DL)は,逐次取得されるデータをベースに評価関数を作成するのにも利用することができる.より具体的には学習を通して行動価値関数を同定することである.ただし,行動価値関数の最大化を直接行うのは問題が多いことが指摘されている。本研究で開発しているABRは,行動価値関数を用いて行動選択反復し.逐次最適化行動に近づけるアルゴリズムであり,この難点を克服している.このアルゴリズムを単路部(複数車線)を走行する車両の車線変更に決定に用い、良好な結果を得た。すなわち、追突を回避しながら安全追い越し距離を学習でき、交通流も安定した状況を作り出すことができる。 (2)交通パフォーマンス特性分析への深層学習の応用:都市内高速道路においてほぼ毎日渋滞する区間を対象に,深層学習を用いた渋滞予測の可能性を検討した。入力データは高速道路に設置された交通量感知器より得られる流入部のオキュパンシーをベースに6.5km下流部の30分後のオキュパンシーの予測を行った結果は予想以上のものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)漸近的最適応答モデルと深層学習の結合 通常,粒子交通流モデルで車線変更をモデル化するには,当該車線での前方車との車間距離,そして追い越車線側における当該車と後方車および前方車との車間距離が追い越しに安全かどうかの確認認が必要になり,比較的余裕のある距離を用いる場合が多い.単独車両のみなら安全な追い越しモデルを作成することは容易であるが,すべての車両を同じ行動をとるとショッウェーブを発生させる可能性が生じる.追い越しの有効車間距離を決定することは自動行システムの設計おいて有用な情報を与える.現時点では車両数が増加すると追突を避ける安全行動により比較的長い車間距離になっているように思われる.学習を長くすることによってより効率的な車間距離が決定できるのかどうか,また,効率性の尺度をどのように決定するかなどの課題が残された. (2)交通パフォーマンス特性分析への深層学習の応用 2,3日先の混雑予測についてはかなり正確に予測できていそうである.一方で,5,6日目についてみてみると,かなり食い違う結果も得られている。学習量が少ないのか、入力層の説明変数が単純すぎるのか、改善の余地はまだ多い。この問題は探査と推測のトレードオフの問題であり、また、予測の精度をどこまで求めるのかという実務的見地での課題を含んでいる。また、今回は中間層を1つ加えただけの最も単純なニューラルネットである。入力層を増やすことによって中間層を深化させるなどの工夫も必要であり、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の基本的方向は、前年度の研究の柱であった(1)漸近的最適応答モデルと深層学習の結合と(2)交通パフォーマンス特性分析への深層学習の応用、におけるDL適用の更なる深化である。両方に共通する課題は、学習量の増加に伴うDLの計算量を効率的に減少させるためのGPUの利用である。特にサーバーを介しないエッジ学習を効率的に行うためには、アルゴリズムの改良が必要になる。個別の課題ごとには以下のようなアプローチを考えている。 1)漸近的最適応答モデルと深層学習の結合 単路部と交差部を連結させ、例えば、左折を行おうとする車両がどの時点で第一車線に流入する方が交差点待ち時間を含めた遅れを最小化できるのか、そして、どの程度までの交通量ならばそれは有効なのか、という課題は交差点設計あるいはバス優先信号などの設計に有益な情報を与えるシミュレーションツールである。現在は単路部と交差部を別々にモデル化しているがこれを統合化する方策を検討する。 (2)交通パフォーマンス特性分析への深層学習の応用 学習データの探査と利用に関しては2つの誤診の問題が指摘されている。前年度の適用結果で5,6日先の予測において、モデルは混雑なしと判断したのに実際は混雑していたという結果は、過去に得られたデータでは混雑があまりなかったことが原因の一つとも考えられる。この問題解決のためには経年的な長期データを利用した学習を実施することのほか、第1の誤診を回避する方策を如何にモデルに組み込むかが必要になる。前年度では利用されなかったデータを含めて入力層を増やす、学習回数を増加させる、といった工夫をを講じることを検討している。
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