カドミウムイオン(Cd2+)は人体にとって有害なイオンであり,簡易分析法の開発が望まれている。本年度は簡易蛍光Cd2+分析法を開発した。本法はCd2+に特異的に結合するDNAアプタマー(Cd-4),これに相補的な塩基配列を持つDNA(c-Cd-4),二本鎖DNAに特異的に結合し蛍光を発する分子(インタカレーター,SYBR Green I)を用いたバイオセンサー(アプタセンサー)で構成される。最初に,Cd-4やc-Cd-4の円偏光二色性スペクトルと融解曲線を解析することで,本法で見られる結果が検出原理で説明できることを確認した。これらの結果から,Cd-4はCd2+と結合してCd2+・DNA複合体を形成し,c-Cd-4とはハイブリダイズしないことがわかった。次に分析条件を最適化した。Cd-4とCd2+との最適反応時間は20分であること,Cd-4とc-Cd-4の最適濃度は10 nMであること,プローブ溶液とサンプルの体積比を1:1とすると分析感度が向上することがわかった。最後にこの条件を用いて水中のCd2+濃度の検量線を作成することに成功した。 さらに,分析コストを削減するため,プローブ溶液とサンプル溶液の体積比を検討した。全ての条件においてプローブ溶液中のCd-4アプタマーとc-Cd-4濃度は10 nMに,SGI濃度は1xに統一した。プローブ溶液量に対するサンプル量の比率を高めると,アプタセンサーで検出されるCd2+量が相対的に高くなるので,検量線の勾配が急になる,すなわちアプタセンサーの感度が高くなると予想した。しかしながら,予想に反して,プローブ溶液量に対するサンプル量の比率が最も低い1:1の時に勾配はもっとも急になった。これはサンプル量が増えるとCd-4アプタマーやc-Cd-4の濃度が低下するためと考えられる。
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