山間集落や途上国での利用を想定し、流水式UV-LED水消毒装置の実証試験を行った。山間集落として、国内の水道未普及地区に位置する一般家庭で小型装置2機種を用いて1年間にわたる実証試験を行ったほか、集落で運営維持管理する集落水道(飲料水供給施設)における実証試験に着手した。途上国としては、フィリピンのオフグリッドな離島で実証実験を行った。太陽電池給電でUV-LED装置を駆動し島内の地下水を消毒するシステムを構築し、現地の大学、高校および住民の協力を得て試験を実施した。これらの研究により、以下の成果を得た。 1)蛇口ごと、家庭ごとでの利用を想定した1年間の実証試験において、大腸菌、大腸菌群、一般細菌、従属栄養細菌のいずれも安定した不活化を維持し、特に大腸菌については処理後不検出を1年間にわたり達成した機種があった。 2)集落水道での実験でも、処理後に大腸菌不検出を維持した。その他の微生物項目についても不検出またはごく低濃度で推移し、試験継続の手ごたえを得た。 3)フィリピン離島での実証試験では、事前の実験室での試行に比べて現場での微生物不活化率が低かった。その原因として、水の紫外線透過率、気泡の影響、野生株大腸菌の紫外線耐性が高いこと、太陽光線により光回復を生じること、などの可能性が挙げられ、一部について実験的に検証した。 4)上記の成果について国際学会、学術論文、寄稿文で国内外に発信した。 本研究により、UV-LEDを備えた小型分散型水供給システムを山間地や途上国に実装する有効性と課題を定量的に示した。
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