研究課題/領域番号 |
17H03330
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗栖 太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30312979)
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研究分担者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20431794)
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40274740)
島崎 大 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (60322046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精密質量分析 / 水道 / 未規制物質 / ノンターゲットスクリーニング |
研究実績の概要 |
低分子有機化合物の分析手法の開発として、質量分析の前段階の分析操作の検討として、特にHPLCによる分離条件の検討を行った。HPLCカラムとして一般的に用いられているC18系のカラムとしてInertSustain AQ-C18(ジーエルサイエンス社)、ペンタフルオロフェニル基結合型(PFP)カラムとして、XSelect HSS PFP XP(日本ウォーターズ)を用い、それぞれ酸性条件もしくは中性条件とした移動相とを用いて比較した。対象試料としては、スワニー川天然有機物と、河川水、および水道水を用いた。河川水、水道水は固相抽出カートリッジで100倍濃縮してから試験に供した。その結果、C18系とPFPカラムでは、酸性の移動相では検出できる物質数に大きな違いが見られなかったものの、中性でPFPカラムを用いた場合には検出物質数が大きく減少した。ただし、いずれの場合においても、従来のフローインジェクション分析に比べれば数倍以上の物質が検出されており、HPLCカラム分離により、より多くの物質を分離検出できることが確認できた。もっとも検出数が高く、かつ広いpH域においても検出数に大きな変化がないC18系カラムのほうが、今後用いていく上で汎用性も高いと判断された。 また次年度以降本格的に実施する調査の予備調査として、埼玉県の入間川を対象とし、水道原水における人為汚染由来物質の抽出と、水道水中への残留について検討した。ほとんど人為起源の汚染を受けていない水道原水と、下水処理水放流地点の下流における水道原水を比較したところ、上流河川水には含まれず、下水処理水に含まれている成分を多く検出した。また、上流に位置する浄水場から供給された水道水にはなく、下流に位置する浄水場から供給された水道水のみに存在する有機物を137種類検出した。これらの多くは、下水処理場放流水に見られる人為汚染由来物質であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度以降本格的に実施する調査に向けて、分析方法の検討、および採水箇所の検討を行うことができた。また、実際に1箇所の河川から採水した予備的検討により、研究目的として掲げた、人為由来物質の抽出が可能であり、かつ対象とすべき物質は100種類以上存在することも明らかとなった。次年度以降の調査に向けて、その準備期間と位置づけていた初年度の研究は、計画通り遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
環境省の環境研究総合推進費で並行して実施している、要調査項目の一斉スクリーニング分析法の確立において、試料前処理法の検討を行っていることから、この結果を活用してより幅広い物質の分析を可能にしたいと考えている。さらに、一部については共通の試料として研究を効率的に遂行していきたい。
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