研究課題/領域番号 |
17H03333
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
山田 剛史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90533422)
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研究分担者 |
山口 剛士 松江工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (30759832)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 嫌気性廃水処理 / EGSB / 嫌気性バルキング / バクテロイデス / クロロフレキシ / HCR-FISH |
研究実績の概要 |
高負荷運転が可能なExpanded granular sludge bed (EGSB) リアクターにおいて、新たな嫌気性バルキング現象が確認されており、16S rRNA遺伝子レベルではあるが、微生物機能の未知な複数の微生物群 (バクテロイデス門とクロロフレキシ門) が関与していることを突き止めている。本研究では、嫌気性バルキングの制御技術体系の構築を目指して、当該嫌気性バルキング現象のメカニズムの解明を目的とした。まず、本研究では、当該未培養微生物がバルキング原因菌の特徴である糸状性の形態を有するかを明らかにするため、これらの微生物群の16S rRNAに特異的なDNAプローブを設計した。設計したDNAプローブと高感度な微生物蛍光検出法であるhybridization chain reaction-fluorescence in situ hybridization (HCR-FISH) 法 を用いた結果、バクテロイデス門とクロロフレキシ門に属する未培養微生物が、バルキング原因菌の特徴である糸状性の形態であることを明らかにした。特に、バクテロイデス門のVadinHA17クラスターに属する糸状性細菌は、他のバクテロイデス門細菌やクロロフレキシ門細菌よりも高頻度に検出された。次に、バルキング原因菌同士や嫌気性バルキング汚泥内に存在する他の微生物との相関関係を統計的に評価した結果、バクテロイデス門に属する2種のバルキング原因菌には、強い正の相関があった。しかしながら、バクテロイデス門細菌とクロロフレキシ門細菌およびクロロフレキシ門細菌同士には、正の相関は確認されなかった。これらの結果は、バクテロイデス門細菌の異常増殖の要因は同一であるが、クロロフレキシ門細菌の異常増殖の要因とは異なることを示唆していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バクテロイデス門とクロロフレキシ門に属する微生物機能の未知な複数の微生物の微生物機能を推定するため、これらの微生物の16S rRNAに特異的DNAプローブとFluorescence in situ hybridization法 (FISH法)を用いて健全な汚泥の空間分布の評価を計画していたが、研究開始前に得た16S rRNA遺伝子配列情報では特異性の高いDNAプローブの設計ができなかった。バルキング原因菌の全16S rRNA遺伝子を獲得するため、新たに16S rRNA遺伝子クローニング法を適用した。得られた16S rRNA遺伝子配列をもとにDNAプローブを設計した結果、特異性の高いDNAプローブを設計できた。次に、設計したプローブの反応条件を決定した後、FISH法を用いてバルキング原因菌の形態を明らかにすることを試みたが、FISH法での検出は困難であった。そこで本研究では、高感度な微生物蛍光検出法であるhybridization chain reaction-fluorescence in situ hybridization (HCR-FISH) 法を採用した結果、糸状性の形態を示すバルキング原因菌より蛍光を得ることに成功した。健全な汚泥におけるバルキング原因菌の空間分布の評価には至らなかったものの、次年度以降実施できるツールと方法は確立できた。本研究計画にはなかったものの、嫌気性バルキング現象のメカニズムの解明とバルキング原因微生物の機能予測を円滑にするため、スピアマンの順位相関係数をもとにした微生物間の相関関係を評価した。得られた解析結果は、複数種のバルキングの発生メカニズムの解明に寄与する内容であった。 本年度、研究計画どおりに完全には進捗しなかったが、研究計画を達成するために改善を加えて研究を推進したともに、研究目的に達成するために新たな解析を加えて実施した。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度において、H29年度で整備できたDNAプローブとHCR-FISH法によって、健全な汚泥におけるバルキング原因菌の空間分布が評価できると思われる。ただし、HCR-FISH法は、汚泥切片内微生物の蛍光観察に利用された実績はないため、実験時に発生した諸問題は、HCR-FISH法の開発者である共同研究者の山口とともに改善に向けて取り組む予定である。この研究が達成できれば、バルキング原因菌の基質推定のために、Stable isotope probing法を実施することを計画している。 一方、DNAプローブとHCR-FISH法によって、フローサイトメーターを用いてバルキング原因菌の細胞分取とそれを利用したMultiple displacement amplification (MDA) 法によるゲノム解析も可能となった。H30年度以降には、これらの解析を実施しているが、困難な場合は、Differential coverage binning法に速やかに切り替えられるように、研究協力者の産業技術総合研究所 成廣主任研究員との打ち合わせを密にしておく。
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