研究課題/領域番号 |
17H03341
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
市之瀬 敏勝 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10151474)
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研究分担者 |
眞田 靖士 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80334358)
高橋 之 大同大学, 工学部, 講師 (20620842)
鈴木 卓 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20738710)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鉄筋コンクリート / 建物 / 耐震壁 / 開口 / 地震被害 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,名古屋工業大学で,不規則な開口配置を有する3体の耐震壁の実験を行った。3階建ての建物をイメージしている。コンクリートは普通強度とした。梁の幅は壁の厚さと同一とした。開口形状は,ドア開口を想定して,縦長とした。試験体のスケールは実大の1/3とし,現実味のある配筋詳細とした。制御の簡略化のため,側柱の軸力は省略した。それを補うために,側柱の主筋量を多めにした。実験により,強度,剛性,変形能力に関する基礎的データを得ることができた。また,開口まわりのひび割れ性状についても貴重なデータが得られた。試験体の表面には縦横に測定点を貼り,デジタルカメラで二次元変形状態を測定した。2,3階の梁は1/400 radという早い時期にせん断破壊し,強度低下が生じた。正方向では梁の圧縮破壊,負方向では壁板の圧縮破壊による耐力低下が生じた。実験で得られた強度低減率は,日本建築学会の計算規準に示された低減率よりもかなり小さな値であった。ドア開口が上下の階で左右に大きくずれた場合でも相当な強度低下がみられた。さらに,有限要素法解析を行うことにより,開口周辺の応力分布について知見が得られた。この研究成果は,日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準」19条(壁部材)の将来の改定に大きく寄与するものと考えられる。また,海外でもこのような実験は少ないので,米国の研究雑誌への投稿を準備しているところである。「縦長開口の開口低減率」という概念自体が海外では珍しいので,注目を浴びるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大阪大学では,基礎梁を対象に要素実験を行う予定であった。しかしながら,壁板の厚さと配筋に関する検討(有限要素法解析など)に予想外の時間と資金が必要となり,実験の実施が間に合わなかった。ただし,現段階でこの検討はほぼ終了しており,平成30年度は当初の予定通り実験の実施が可能となると考えられる。 大同大学では,中間梁の荷重変形関係を得ることを目的とした要素実験を行う予定であった。しかしながら,この実験も,大阪大学と同じ理由により,実施が間に合わなかった。平成30年度は当初の予定通り実験の実施が可能となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
名古屋工業大学では,壁板に高強度コンクリート,周辺架構に低強度コンクリートを用いた連層壁実験(2~3体)を行う。これは,耐震補強を想定したものである。試験体の表面には縦横に測定点を貼り,デジタルカメラで二次元変形状態を測定する。強度の異なるコンクリートを組み合わせた場合の問題点について明確になる予定である。 大阪大学では,基礎梁を対象に要素実験(2体)を行う。この実験では,通常の梁のせん断実験とは異なる強度と剛性が得られるはずである。なぜなら,壁と基礎梁の境界面でも変形が生じるからである。基礎梁の剛性は耐震壁の性能に重大な影響を及ぼす。名古屋工業大学の実験では基礎梁を固定するが,実際の建物では,両者の中間的な挙動になることが多いと予想される。 大同大学では,中間梁の荷重変形関係を得ることを目的とした要素実験(2体)を行う。この実験でも,通常の梁のせん断実験とは異なる強度と剛性が得られるはずである。中間梁では1/400 radレベルの小さい変形で破壊が生じ,耐震壁の性能に大きな影響を及ぼすと予想される。
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