研究課題/領域番号 |
17H03343
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神野 達夫 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80363026)
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研究分担者 |
佐藤 利昭 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (00637887)
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 阿蘇市 / 熊本地震 / 微動アレイ観測 / 地下構造モデル / 地震観測 / 経験的グリーン関数法 |
研究実績の概要 |
(1)本年度および事前の微動アレイ観測記録を統合した解析からS波速度構造を推定した。この構造から一元重複反射理論によって算出された理論地盤特性は、周期3秒付近で大きな増幅率を持つことから、地盤特性が本震時にK-NET一の宮で観測された周期3秒の長周期地震動の成因の一つであることを明らかにした。また本件について日本建築学会大会にて発表した。 (2)阿蘇市役所、熊本日日新聞社阿蘇総局、阿蘇地域振興デザインセンター、K-NET一の宮にて地震観測を開始し(阿蘇市役所は10月中旬、それ以外は9月中旬から)、設置以降に、少なくとも阿蘇地域で有感となった地震を各点で観測した。また本件について日本地震学会秋季大会にて発表した。 (3)地域活動支援センター時計台、阿蘇市一の宮町インフォメーションセンターの1階の床面と梁上にて10月中旬から地震観測を開始した。各建物で数個の地震を観測した。また、古い木造建物における微動記録と建物の振動特性の関係について予備的な検討を行い、論文(都市・建築学研究)にて発表した。 (4)対象地域内の89点で単点微動観測を実施した。微動H/Vスペクトルから推定した地盤の卓越周期は2~5秒であること、南東から北西にかけて卓越周期がやや長くなる傾向があること、この傾向が重力探査の結果や既存地下構造モデルの地震基盤の出現深さ分布と調和的であることを明らかにした。 (5)(1)の地下構造と一次元重複反射理論に基づいて算出された中小地震の地震基盤波と既存の震源断層モデルを用いて、経験的グリーン関数法によって本震時のK-NET一の宮の地震基盤波を合成した。合成された本震時の地震基盤波にも周期3秒の卓越が見られたことと(1)の結果から、震源特性によってもたらされた周期3秒の地震動が地盤増幅特性によってさらに増幅されたことが、観測された長周期地震動の成因であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗状況は、以下のことを総合的に判断し、「おおむね順調に進捗している」とした。 (1)当初は、K-NET一の宮周辺以外の地点においても微動アレイ観測を実施する予定であったが、単点微動観測によって地盤震動特性分布を把握した上で、微動アレイ観測の実施場所を検討する方が、効率が良いという判断から、本年度はK-NET一宮周辺での微動アレイ観測以外は実施しなかった。本年度の単点微動観測による対象地域内の地盤震動特性の検討は順調に進んだことから、次年度以降は、この検討結果に基づいて効率的に微動アレイ観測を実施することができると考えている。 (2)地盤における地震観測は、当初3地点での観測を予定していたが、これを4地点に増やし、観測を開始した。すでにいくつかの記録は取れており、順調に進捗していると考えている。建物での地震観測においても、観測を行う建物の選定に若干の時間を要したが、当初の予定通り、2棟の建物で観測を開始しており、記録も得られていることから、順調に進捗していると判断した。 (3)対象地域における建物の振動特性に関する調査では、地震観測を行う建物の選定に時間を要したため、観測を開始したのみに留まっており、十分に進捗しているとは言えない。しかし、地震観測のための建物の現地踏査によって対象地域の建物の分布が概ね把握できたことや別途微動と構造物の振動特性の関係について予備的検討が進められたことから、次年度以降、円滑に進められると考えている。 (4)本震時にK-NET一の宮で観測された長周期地震動の成因については、震源特性によってもたらされた周期3秒の地震動が地盤増幅特性によってさらに増幅されたという定性的な結論は見出しており、今後の定量的な議論や震源での長周期成分発生のメカニズムに関する検討を行うに当たっての基礎的な検討はできたことから、順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)微動アレイ観測による地下構造の推定に関しては、本年度の単点微動観測の結果を踏まえ、適切な実施場所を選定し、随時観測を実施する。 (2)地震観測については、地盤ならびに建物の双方において本年度に設置した地点での観測をしばらくは継続する予定ではあるが、十分な記録が得られたと判断された場合は、別の地点に移動して観測を行うことも視野に入れて検討を進める。 (3)建物の振動特性の把握については、現地踏査や本年度の予備的検討の結果を踏まえ、立地や建設年代を考慮しながら建物の選定を行い、適宜微動測定を実施する予定である。 (4)K-NET一の宮で観測された長周期地震動は、震源特性によってもたらされた周期3秒の地震動が地盤増幅特性によってさらに増幅されたことが明らかになったが、今後は震源からどの程度振幅を持った地震動が発生したのか、またなぜ3秒であったのかなど、震源メカニズムの検討にまで踏み込んだ詳細な検討を進める。また阿蘇市街地における微動探査結果に基づく地下構造モデルを構築し、地震動シミュレーションを行い、阿蘇市街地の本震時の地震動分布の把握を試みる。 (5)K-NET一の宮の西3.5km程度に位置する免震建物において、本震時の罫書き記録が得られている。当該建物は本研究の当初の対象範囲からは外れているが、このような情報は地震動シミュレーションによって得られた地震動の妥当性の検証に活用できることから、当該建物の周辺における微動アレイ観測、ならびに地震観測についてもその実施に向けて検討を行う。
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