研究課題/領域番号 |
17H03348
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研究機関 | 鹿島建設株式会社(技術研究所) |
研究代表者 |
鈴木 康嗣 鹿島建設株式会社(技術研究所), 都市防災・風環境グループ, グループ長 (70416767)
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研究分担者 |
上野 嘉之 鹿島建設株式会社(技術研究所), 地球環境・バイオグループ, 上席研究員 (60416724)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 地盤改良 / 液状化 / 微生物 / 地震 |
研究実績の概要 |
研究計画調書に示した研究計画の内,2018年度は下記に示すⅠ,Ⅱ,Ⅴ,Ⅵを実施した。 Ⅰ「国内土壌に実在する不特定微生物の代謝による地盤固化原理の解明と最適改良液の選定」,Ⅱ「様々な土質における改良効果の把握と最適改良液の選定」では,神奈川県の地盤から採取した微生物といくつかのカルシウム源・栄養源を用い,濃度,養生期間・温度などが異なる条件下で要素レベルの固化実験を行い,固化状況を確認すると共に最適な改良液とその条件を選定した。特に,栄養源の濃度はかなり薄くても良いことを明らかにした。 Ⅴ「原位置における液状化強度確認方法の確立」では,既存建物直下地盤の液状化強度を確認する手法としてサンプリングやサウンディングは現実的ではないため,前年度と同様に,地盤改良前後で常時微動や各種振動源による振動を,申請機関が保有する振動計測車を用いて80成分程度で同時に測定し,地表における動的応答の変化から建物直下に対応する地盤のせん断波速度の増加量を推定し,液状化対策の効果を確認した。 Ⅵ「原位置実証実験の準備と実施」では,原位置試験サイトにおいて,ウエルポイント工法を応用した手法により改良液を注入すると共に数m離れた位置で地下水を揚水し,その中間位置の地盤(液状化対象土層)に地下水の流れを利用して改良液を一様に拡散させた。その効果を確認するための原位置地盤調査,サンプリング試料の液状化強度試験を行い,N値,せん断波速度Vs,三軸液状化強度の明確な増加を確認した。また,Ⅴの方法でも液状化強度が増加した範囲を推定した。なお,その後もpHなどを測定しており,今後,半年から1年待って地盤調査等により改良効果を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は,基本的に「研究実績の概要」と同じである。 Ⅰ,Ⅱでは,低コストの尿素,カルシウム源,栄養源を用いた改良液,最初は高濃度でその後薄めた改良液,増粘剤を混ぜた改良液,および低濃度栄養源や低コスト栄養源の改良液などによる室内固化実験を行い,三軸液状化試験により液状化強度に及ぼすそれぞれの要因の影響を把握すると共に,現時点において最良の改良液の配合を決定している。概ね順調に進み,今後,さらに最良で低コストの改良液の配合を模索する。 Ⅴでは,微生物により改良した原位置地盤において,複数の振動センサーを格子状に並べた微動測定や,改良地盤上並びにその脇に振動センサーを直線状に並べて板叩きなどによる振動源からの波形を測定し,改良の有無により高振動数領域で明らかな差が生じ,地表における振動波形から改良効果を把握可能であることを確認している。また,地盤調査により,N値,Vs,液状化強度の明らかな増加を確認している。概ね順調に進み,今後,振動波形の計測方法や処理方法の高度化を図る。 Ⅵでは,原位置試験サイトにおいてウエルポイント工法を応用した手法により数m離れた位置で改良液の注入と揚水を行い,その中間位置の地盤に改良液を一様に拡散させ,振動計測により改良範囲を確認すると共に,原位置地盤調査とサンプリング試料の液状化強度試験を行い,N値,せん断波速度Vs,液状化強度の明確な増加を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書に示した研究計画の内,2019年度は下記に示すⅠ,Ⅱ,Ⅴ,Ⅵを実施する。 Ⅰ「国内土壌に実在する不特定微生物の代謝による地盤固化原理の解明と最適改良液の選定」,Ⅱ「様々な土質における改良効果の把握と最適改良液の選定」では,改良液の内容や濃度を改良すると共に,それらの改良液を用いて様々な土質で液状化強度が上昇することを,三軸液状化試験で確認すると共に,それぞれの土質に最適な改良液を選定する。 Ⅴ「原位置における液状化強度確認方法の確立」では,地盤改良の前後で申請機関が保有する振動計測車を用いて100成分程度の同時常時微動測定や振動測定を実施し,地盤の動的応答の変化から建物直下に相当する地盤のせん断波速度等の増加量を推定し,液状化対策の効果を確認する手法を高度化する。 Ⅵ「原位置実証実験の実施」では,原位置試験サイトにおいて2017年度にウエルポイント工法を応用した手法により改良液を注入すると共に数m離れた位置で地下水を揚水し,その中間位置の地盤(液状化対象土層)に改良液を一様に拡散させ,改良効果を確認した。引き続き採水してpHなどを測定しており,今後,半年~1年程度待って,地盤調査等により改良効果を確認する。また,前記Ⅴで確立されている手法により,液状化強度の増加範囲と地盤の動特性変化を確認する。これらの結果から,地盤改良工法としての技術的成立性を実証する。 Ⅶ「設計法の確立と液状化対策工法の実用化」では,設計法をまとめ,対策工法として成立させる。
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