研究課題/領域番号 |
17H03349
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
持田 灯 東北大学, 工学研究科, 教授 (00183658)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 建築環境・設備 / 地球・都市環境 / 将来気候 / 熱収支構造 / 屋外温熱環境設計 |
研究実績の概要 |
1.WRFによるメソ気象解析の予測精度の検討と改善:WUDAPT法により作成した仙台の市街地のLocal Climate Zone map (LCZmap)を土地利用条件としたWRF解析を行い、解析結果をAMeDASによる気象観測データと比較した。WRF解析における人工排熱量や、建築物の熱容量などの物性値を見直すことにより、WRFによる予測精度を向上させることができた。 2.ミクロ気象の長期予測手法の開発:代表的条件を対象とするミクロ気象解析データを教師データとして利用し、Neural Networkにより建物の熱負荷計算のための入力用気象データを作成する方法を拡張し、既に実施している冷房負荷・建物周辺のミクロ気象予備解析結果を教師データとして、Neural Networkによりミクロ気象の長期予測を行うことを最終目標に、昨年度から引き続き予測システムの構築に取り組んでいる。 3.将来のメソ気象予測及び熱中症リスク評価:全国13都市の消防局、消防庁から2008年から2017年までの熱中症搬送データ(合計約6万8千件)を収集し、熱中症Riskカーブ(日最高WBGTと熱中症搬送率の関係)を分析した。また、気候変動だけではなく高齢化の影響を加味した将来の熱中症Risk評価を行った。 4.都市空間及び市街地空間の3次元顕熱・潜熱収支構造の分析:「1.WRFによるメソ気象解析の予測精度の検討と改善」で確立した解析手法を用いて、現在と2050年代の仙台の気候の将来予測を行った。この結果から、現在と将来の都市空間、市街地空間の移流・乱流拡散による顕熱・潜熱輸送の3次元構造と熱収支構造の変化を分析した。当該項目は当初は今年度ではなく次年度実施予定であったが、研究が大幅に進んだため実施された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「4.都市空間及び市街地空間の3次元顕熱・潜熱収支構造の分析」にある通り、現在と将来の都市空間、市街地空間の移流・乱流拡散による顕熱・潜熱輸送の3次元構造と熱収支構造の変化を分析した。当該項目は当初は今年度ではなく次年度実施予定であったが、研究が大幅に進んだため実施された。
|
今後の研究の推進方策 |
1.都市空間及び市街地空間の3次元顕熱・潜熱収支構造の分析 ①今年度は仙台のみを対象として実施した都市空間の顕熱・潜熱・全熱収支分析と熱中症Risk評価を、次年度は東京、上海、武漢、広州などの多くの都市を対象として実施する。さらに、気候変化に伴う都市空間の熱収支構造の変化を高エンタルピー化・蒸暑化に着目して3次元的に分析するとともに大気境界層の鉛直構造の変化も分析する。 ②3つの評価軸(A)地球温暖化緩和の効果(省エネ化)、B)ヒートアイランド緩和の効果(大気加熱量削減)、C)都市温暖化への適応の効果(熱中症リスク低減))により、大気上空から流入する潜熱量の増加が歩行者空間の温熱環境や冷房負荷に及ぼす影響を定量化する。人体の熱収支に及ぼす影響(ミクロスケール)については、屋外温熱環境と人体生理量の同時測定から精度検証される人体生理モデルを付加して、温熱生理を考慮した快適性・熱中症リスクで評価する。 2.2050年代の気候条件化における各種都市温暖化対策の功罪の評価と蒸暑化に対する適応策の提案 海風導入、気化冷却(緑化、ドライミスト)、高反射化(Cool Roof、遮熱舗装、窓面遮熱フィルム(従来型、再帰性型))、街路樹等の功罪をA)地球温暖化緩和の効果(省エネ化)、B)ヒートアイランド緩和の効果(大気加熱量削減)、C)都市温暖化への適応の効果(熱中症リスク低減)、の観点を網羅して評価し、将来の気候変化へ適応するための都市環境設計の指針を打ち出す。
|