(1)都市空間及び市街地空間の3次元顕熱・潜熱収支構造の分析 ①都市空間:都市空間の顕熱収支分析に基づくゾーニング手法を潜熱・全熱収支の評価可能な形に拡張し、気候変化に伴う都市空間の熱収支構造の変化を高エンタルピー化・蒸暑化に着目して3次元的に分析した。 ②市街地空間:3つの評価軸(A)地球温暖化緩和の効果(省エネ化)、B)ヒートアイランド緩和の効果(大気加熱量削減)、C)都市温暖化への適応の効果(熱中症リスク低減))により、大気上空から流入する潜熱量の増加が歩行者空間の温熱環境や冷房負荷に及ぼす影響を定量的に評価する手法を整備した。人体の熱収支に及ぼす影響については、本研究で改良を行った人体生理モデルを用い、温熱生理を考慮した快適性・熱中症リスクにより評価した。具体的には、人間の運動状態と、人間が暴露される風環境の両観点から人間の顕熱方熱量を決定する対流熱伝達率決定法の提案、及び、人間の運動状態により決まる非線形の発汗応答を組み込んだ発汗モデルのモデルパラメータ提案を行った。なお当該モデルは、屋外温熱環境と人体生理量の同時測定から精度検証され、屋外の暑熱環境における人体生理量の予測精度向上を確認した。さらに、昨年度開発した機械学習によるミクロ気象の長期予測手法に関して、back propagation型のneural networkに遺伝的アルゴリズムを組み込んだモデルとして再構築し、その予測精度を向上させた。 (2)2050年代の気候条件下における各種都市温暖化対策の功罪の評価と蒸暑化に対する適応策の提案 都市温暖化対策として、壁面緑化、街路樹の配置、遮熱舗装、窓面遮熱フィルムの効果を、A)地球温暖化緩和の効果、B)ヒートアイランド緩和の効果、C)都市温暖化への適応の効果、の3つの観点を網羅した評価を行った。ここから、各種対策の功罪が定量的に評価された。
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