研究課題/領域番号 |
17H03352
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鍵 直樹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20345383)
|
研究分担者 |
諏訪 好英 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10416836)
柳 宇 工学院大学, 建築学部, 教授 (50370945)
並木 則和 工学院大学, 先進工学部, 教授 (40262555)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 准教授 (80469246)
金 勲 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (00454033)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 室内空気質 / 浮遊粒子 / ダスト / SVOC |
研究実績の概要 |
本研究では,室内空気汚染物質の中でも,浮遊粉じん,堆積粒子(ハウスダスト),PM2.5,超微粒子などの粒子状物質を対象に,室内空間における実態を明らかにするために,粒子の侵入,発生・生成,沈着,再飛散,付着・吸着,排気,再飛散などの動的挙動を実験及び数値解析により解明することで,室内での粒子の生涯を明らかにすることを目的とする。更にこのような挙動と共に物質同士の相互作用をも考慮に入れた粒子の汚染状況の把握と,それに伴う居住者の健康リスクの評価を行う。また,建築物・住宅などの建物,中央・個別方式などの空調システムの違いによる実態を把握した上で有効な対策も検討することにより,複合的な室内空気汚染機構の解明,健康リスク評価及び対策について新たな展開を示すものである。 今年度においては,ハウスダストについて,住宅において床面堆積ダスト及びエアコンフィルタに捕捉されたダストを採取,含有するSVOCの分析を行った。10件の住宅を対象とし,室内空気,堆積ダスト,フィルタダストをGC/MSで分析した。 分析の結果,TPP,BHT,DOA,DEP,DBP,DEHPが検出され、ほぼ全てのダストでDEHPが最も高濃度であった。また、両ダストとも内装材の種類には依存せず,フィルタダストについてはダスト齢とエアコンの使用頻度の影響が見られた。各ダスト中と室内空気中のSVOC濃度の相関は,どちらも無相関であった。ダスト中のSVOCは一定期間曝露され吸着したものであるのに対して、室内濃度は測定時点の瞬時値であることが要因と考えられる。2種のダスト中の濃度については,正の相関が見られ,同じ室内のダストであれば蓄積場所に関わらず同様の傾向を示した。フィルタダスト中の濃度がフロアダスト中の濃度より高い傾向となり,床に比べフィルタの掃除頻度が低く,SVOCが吸着する時間が長いためであると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,住宅における粒子状物質に関する検討を行った。特に,ハウスダスト中に含まれるSVOCの分析において,床面堆積ダスト及びエアコンフィルタのダストの分析を行うことにより,傾向を見いだすことができた。さらに,これらのダストから新たな汚染の可能性として,オゾンに暴露した際のダストの変質についても検討を行うことができた。 また,建築物における浮遊粒子状物質の実態調査を行い,幅の広い粒径範囲で室内外において実測を行い,データの蓄積を行うことができた。さらに,室内浮遊粒子状物質の発生源として,調理時の発生について,住宅における実測,換気扇による捕集性能評価及び住宅の特性との関係について特性をみることができた。 数値解析に適用するための準備及びパラメータ設定,リスク評価に用いる文献調査なども順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
浮遊粒子中に含まれるSVOCについては,粗大粒子の組成及び粒径をコントロールし,浮遊及び堆積時のSVOC付着速度の導出を行う。また,浮遊粒子への浮遊微生物の付着実験には実験環境上の危害のない物質に限定し,ネブライザーにより個々に発生させた微粒子と微生物との付着状況を電子顕微鏡を用いて明らかにするものである。浮遊粒子濃度と微生物濃度の関係など,その特性について検証する。 実態調査及び相互作用に関するチャンバー実験より,各種条件における付着の傾向についてデータの蓄積を行う。室内の粒子状物質の基本となる外気からの侵入に際しては,エアフィルタの捕集効率,ダクト内壁への沈着,室内においては沈降速度,表面沈着率及び再飛散,空間中での凝集,換気による排出,その他本研究で判明した要素についてモデルに組み入れるための実験,検証を行う。 数値解析的な評価においては,各濃度,粒径分布などの条件において考えられる浮遊粒子と汚染物質の相互作用について,前年度に検討した手法を用いて数値解析的に室内空間の空気質について評価する。 リスク評価については,単体の汚染物質の健康リスクに加え,浮遊微粒子に付着した際のリスク評価について検討を行う。汚染物質の種類はもちろん,付着した浮遊粒子の粒径によっては,呼吸器への沈着部位も異なってくること,経皮曝露も考慮に入れた評価方法について,文献調査及び新たな検討を加えて評価を行う。
|