研究課題/領域番号 |
17H03365
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 新 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (40292891)
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研究分担者 |
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20447345)
窪田 亜矢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (30323520)
泉山 塁威 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40774055)
園田 聡 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 研究員 (60773950)
星野 裕司 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 准教授 (70315290)
長濱 伸貴 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (70461134)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 空地 / 空地デザイン / 空地マネジメント / 空地アーバニズム / プレイスメイキング / パブリックスペース / エリアマネジメント / 空き地 |
研究実績の概要 |
本研究は5つの研究課題がある。課題A「空地デザイン事例データベースの作成」については、公共的利用の属性に着目して選定をすすめ、日本とアメリカの事例を中心に作業を進めた。課題B「公共的利用のための空地デザインのあり方の調査研究」については、利用から空地(場所)をデザインするアプローチについて、アメリカ都市で展開しているプレイスメイキング及びタクティカル・アーバニズムの理論と実践について分析した。また、日本国内では首都圏郊外のある実際の空地を実践フィールドとして、住民参加型マーケットの企画運営と子供の遊び場になるグリーンインフラ空間の実験的整備を行い、公共的利用を創造するような空地デザインの在り方を検討した。さらに、空地(点)から周辺市街地(面)へと空地のデザインと公共的利用を連鎖的に広げていくような事例のあり方について、海外先進都市での水際の再生、ブラウンフィールドの環境再生、パブリックスペースの再生といった観点からの調査と、エリアマネジメント、建物リノベーションと周辺空地再生といった観点からの国内都市調査を行い、公共的利用を促す空地デザインを、単なる表層のデザインにとどまらない、まちづくり(アーバニズム)として捉えていくための論点の吟味分析を行った。課題C「空き地の公共的利用を促す制度的枠組みの検討」については、被災市街地の空地調査と利活用スタディ(復興計画と成果、大量空きストックの利活用の動向調査等)、一般市街地の空地調査と利活用スタディ(空き地対策、生産緑地の利用実態等)、パブリックスペース利活用調査とスタディ(駅前広場の利活用促進等)を通して、制度的枠組みにかかる検討を行った。課題D「公共的空地利用の成立要件の調査研究」については、事例情報の収集にとどまった。課題Eは全体とりまとめ作業であり、H29年度は着手しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題Aについては、A1文献調査データベース27件、A2現地調査データベース9件を収集した。課題Bについては、2つの方向性で整理した。一つは利用から空地(場所)をデザインするアプローチであり、ヒアリングを基礎とする2つのケーススタディと、空き地を借りた整備実験による実践的スタディ1つを実施した。実践的スタディについては、空き地だった場所の利用から空地をデザインするプロセスそのものを検証する機会となった。今後も公共的な利用の創出と空地デザインの修正を行う道筋が定まり、人間中心デザイン思考での空地デザイン過程に関する実践と検証作業の柱となる位置づけが確立した。もう一つは、空地(点)から周辺市街地(面)へと空地のデザインと公共的利用を連鎖的に広げていくようなアプローチであり、海外・国内都市の調査を実施した。以上の調査研究を通じて、公共的利用を促す空地デザインを、単なる表層のデザインにとどまらない、まちづくり(空地アーバニズム)として捉えていくための10のテーマ(スケールメリットのある空地マネジメント、稼ぐ空地を通したエリアマネジメント、水際の産業跡地の空地デザイン、空地を通した復興、汎用性あるグリーンインフラ空地のデザイン、路地の居場所化、駅前広場の居場所化、線路敷跡地の居場所化、生産緑地の計画的空地転用、多様性を許容する緩やかな公共空間)を仮設定し、空地アーバニズムの論点整理を進めた。課題Cについては、被災市街地の空地調査と利活用スタディ、一般市街地の空地調査と利活用スタディ、パブリックスペース利活用調査を通して、制度、主体、その他の仕組みに関する検討を行い、先に示した空地アーバニズムのための10の仮テーマと論点整理に対してのフィードバックを行った。課題Dについては、事例情報の収集にとどまった。課題Eは全体とりまとめ作業であり、H29年度は着手しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
課題Aについては、A1文献調査データベースとA2現地調査データベースの情報収集を継続する。課題Bについては、今年度の調査研究を継承して二つの方向性で進める。利用から空地(場所)をデザインするアプローチについては、まずプレイスメイキング/タクティカル・アーバニズムの理論と実践に関する情報収集について、国内外の事例研究を引き続き進める。更に、空き地を借りた整備実験による実践的スタディについては、H29年度に実施した住民参加型マーケットの継続と深化のための空地デザイン改修と空地マネジメントの実践に取り組み、空き地だった場所の公共的利用から空地をデザインするプロセスの検証を進める。一方で空地の日常利用である子供の遊び場になるグリーンインフラ空間の実験的整備の側面についても、空地デザインとマネジメント手法の改良を進める。加えて、空地(点)から周辺市街地(面)へと空地のデザインと公共的利用を連鎖的に広げていくアプローチについては、海外・国内都市の追加調査を実施して、公共的利用を促す空地デザインを、単なる表層のデザインにとどまらない、まちづくり、すなわち空地アーバニズムとして捉えていくための論点の精査を行う。課題Cについては、引き続き被災市街地の空地調査と利活用スタディ、一般市街地の空地調査と利活用スタディ、パブリックスペース利活用調査を通して、制度、主体、その他の仕組みに関する検討を行い、先に示した空地アーバニズムのための10の仮テーマと論点整理に対してのフィードバックを行う。課題Dについては、国内または海外都市での空地の公共的利用の背景にある価値・文化・思想について調査スタディを行い、空地アーバニズム論としての構築を検討する。以上の調査研究を踏まえ、課題Eの全体とりまとめ作業については試論を整理する。
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