研究課題/領域番号 |
17H03368
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大窪 健之 立命館大学, 理工学部, 教授 (10252470)
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研究分担者 |
青柳 憲昌 立命館大学, 理工学部, 准教授 (00514837)
深川 良一 立命館大学, 理工学部, 教授 (20127129)
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
吉富 信太 立命館大学, 理工学部, 教授 (30432363)
金 度源 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (40734794)
鈴木 祥之 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (50027281)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60511508)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 伝統的な減災の知恵 / 重要伝統的建造物群保存地区 / 建物群としての防災性能 / 建築様式 / 災害史 / 防災技術 / 防災計画 / 文化財保全 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、数多くの災害をくぐりぬけてきた伝統的な街並みを調査対象として、防災・減災の視点からその空間的特徴を抽出することにある。これを実験やシミュレーション等の科学的手法により解析することで、伝統的空間特性に内在する災害安全性を維持・向上するための技術的・計画的手法を整理する。今後、現代技術での補完を視野に入れ「伝統を活かし未来へ向けた減災の街並み様式」の構築に資することを目指す。 初年度の2017年度には、伝建地区を空間特性に応じて分類し、実際に現地調査を実施することで詳細なデータ収集を行った。具体的には2017年10月16日(月)に火災を経て変遷してきた高山市内の2地区の調査を実施し、2017年10月30日(月)には洪水と土砂災害の複合的災害リスクを持つ金沢市内の4地区の調査を実施、2018年3月中には加悦地区の旧庁舎を中心に防災の観点からチーム別に調査を実施した。 2018年度には、2018年4月21日(土)に台地上に独立し外部支援が困難な富田林地区の調査を行い、行政担当者とも意見交換を行った。さらに2018年12月8日(土)には洪水氾濫と土砂災害リスクに関して上賀茂地区の調査を行った。 特に飛騨高山地区については、昨年度に連続する土蔵群の防火帯としての能力について科学的に検証を行うことができたが、2019年度には社寺など伝統的な樹林群の延焼抑止性能についても検証を行う予定である。地震対策に関しても、隣接する伝統木造が群として発揮する耐震性能について検証中であり、洪水や土砂対策についても過去の災害履歴と建物分布の関連性について調査中である。 2019年度には、2019年6月1日(土)には昨年に火災で延焼被害が発生した富田林地区を再調査する予定である。今年度はこれら成果を踏まえて分析を完了し、成果をとりまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は初年度となる2017年度中に、すべての調査対象候補地区の初回現地調査を完了する予定であったが、各伝建地区における行政担当者を含めた日程調整の都合からこれが叶わなかった。これをカバーすべく2018年度に全ての初回調査は完了したが、2019年度中にも新たな災害発生などを受けて追加調査を実施する予定である。 一方で、飛騨高山地区における土蔵群を対象とした延焼抑止帯としての性能評価や、建造物群としての耐震性能評価など、地区によっては予定以上に研究が進捗したケースもある。 2019年度には、追加調査を進めつつも、できる限り分析を遂行できるよう、引き続き研究の進捗に努める。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、以下の計画に沿って進捗を目指す。 建物群としての災害史および街並みの変遷に関する情報整理を完了する。 具体的には歴史的建造物の残存状況や道路や河川、斜面やその他の都市的要素などの変化の軌跡を記録し、その背景にある災害の影響について関連付けできる要素を抽出する。特に近代には近世までの減災思想と無関係に都市域が拡大しているところが多く見られるので、重点的にその地域の災害危険性を分析するとともに、あわせて今後の防災施策の検討に向けて当該地域の歴史的価値の位置づけを進める。 さらに、災害により変化してきた建物群に内在する減災要素について整理を行い、減災の知恵としての有効性について仮説の設定を試みる。 最終年度となる今年度は特に、その仮説を立証するために必要な科学的検証方法を確立し、実験及びシミュレーションを実施する予定である。
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