逆磁歪効果を利用した振動発電は、身の回りの振動を電気エネルギーに変換する革新的なエネルギーハーベスティング技術として期待される。本研究では、FeGa合金単結晶における逆磁歪効果の発現機構を解明し、振動発電デバイスの優れた発電特性との関係を明確にすることを目的とする。 振動発電デバイスでは、コイルの中にFeGa合金単結晶を配置する。FeGa合金単結晶が振動により圧縮されたり引張られたりすると、逆磁歪効果により磁区構造が変化し、それに伴いコイルを貫く磁束が大きく変化するため、電磁誘導により大きな誘導起電力が得られる。圧縮および引張り応力がFeGa合金単結晶の磁区構造におよぼす影響を明らかにするために、本年度は、応力印加装置を設置したKerr効果顕微鏡を用いて、応力印加状態での磁区構造のその場観察を行った。FeGa合金単結晶の{100}面における印可応力無しおよび印可磁場無しの初期磁区構造は、面内の4つの<100>磁化容易磁区方向を磁化方向とする磁区および直線的な180度磁壁と階段状の90度磁壁で構成される。この状態で面内の<100>方向に引張り応力を印加すると、磁化方向が引張り方向と平行方向の磁区および直線的な180度磁壁で構成された縞状磁区が観測された。一方、同一方向に圧縮応力を印加すると、磁化方向が圧縮方向と垂直方向の磁区および直線的な180度磁壁で構成された縞状磁区が観測された。つまり、印加した応力を緩和するように90度磁壁が移動および消失することが明らかになった。
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