研究課題/領域番号 |
17H03377
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
谷山 智康 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10302960)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁性 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、スピン-軌道相互作用を系統的に変化させることを通して反強磁性体、特にFeRh規則合金における格子-スピンダイナミクス変換の学理の構築を最終目標としている。本目的を達成するために本年度は以下の研究項目を実施した。 (1)マグネトロンスパッタ法およびMBE法を用いたFeRh薄膜のエピタキシャル成長 マグネトロンスパッタ法によりAr分圧を制御することで反強磁性-強磁性転移を示す薄膜を作製した。しかしながら、作製した薄膜の磁気転移温度はバルク値よりも高く、また磁気転移の温度域が広いなど、理想的とは言えない。そこで、成膜手法をMBE法に変更し基板温度620℃でFeRh薄膜を成長した。その結果、明瞭な磁気転移を示すFeRhエピタキシャル薄膜を作製することに成功した。 (2)MBE法により作製したFeRh薄膜の電気伝導特性 明瞭な磁気転移が観測された基板温度620℃で成長したFeRhエピタキシャル薄膜に対して電気伝導特性を評価したところ、薄膜形態においてさえ電気的な導通を確認することができなかった。この起源を明らかにするためにAFMによる表面形態の観測の結果、FeRhが島状成長し、島間に空隙が形成されていることに起因していることが分かった。さらに成膜条件を精査した結果、基板温度420℃で成膜し、620℃でポストアニールを行うことで、明瞭な磁気転移を示し、電気的導通を持つ薄膜試料を得ることができることが分かった。この電気伝導性を持つ試料を細線状に微細加工して電気抵抗の温度依存性を評価したところ、磁気転移に起因する明瞭な電気抵抗の飛びが観測された。また、電気抵抗の温度依存性が、細線の幅に依存して昇温、降温過程の温度履歴と非対称性が発現することが分かった。この結果は細線幅と反強磁性、強磁性ドメインサイズに関連した現象であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のFeRh薄膜の高品質形成手法が確立しており、また当初想定していなかったFeRh薄膜における島状モフォロジーの形成、電気抵抗の温度依存性の非対称特性等を見出すことに成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において確立されたFeRh薄膜において、界面で発現するスピン-軌道相互作用を誘導するために、4d, 5d遷移金属薄膜を被覆したヘテロ構造薄膜の作製手法を確立し、さらに、4d, 5d遷移金属薄膜の被覆効果が反強磁性-強磁性磁気転移に与える影響を調査する。さらに、電界によるFeRh薄膜における磁性変調効果を調査する。
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