研究課題/領域番号 |
17H03380
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
島田 敏宏 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10262148)
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研究分担者 |
柳瀬 隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00640765)
川村 史朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (80448092)
山口 誠 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90329863)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭素材料 / 超高圧 / 有機分子 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、まだ未解明の点が多い有機化合物の焼成による炭素材料の形成の基礎を掘り起こし、原料分子合成、高温高圧プロセスおよびCVD等の製膜プロセスによる炭素固体合成、電子顕微鏡や紫外ラマンを用いた構造解析、計算科学による反応過程の解明、さらに光触媒や電極触媒等、局所構造に由来する新機能の探索を行うことを目標としている。 平成30年度には、以下のような成果が得られた。(1)平成29年度に導入したキュービックアンビル高圧装置を用いて高圧実験を行い、室温で分子の重合が起こることを見出し、第一原理計算により起こっている現象を解析した(Jpn.J.Appl.Phys. 58, SBBG13(2019))。また、高圧印加下で温度を上昇させると気体発生を伴う爆発的反応が起こることを明らかにした。(2)グラフェンと六方晶窒化ホウ素を原料としてトポタクティック合成した炭素材料の磁性測定を行い、発現する強磁性の詳細な測定と解釈を行った(J.Alloy.Compounds in press)。(3)リチウムアセチリドLi2C2を合成し、アルカリ金属やヨウ素との反応を調べた。アルカリ金属との反応では、実験の精密化によりsp2とsp3が混じった炭素が得られたことを明確に確認した。ヨウ素との反応では、200℃という低温でも結晶性の高いグラフェンナノリボンが得られることがわかった。その他、温和な条件で多様な炭素が得られることを明らかにした。その他、合成した有機分子の結晶構造からバンド計算により物性を予測するなど、派生的な研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、以下の項目について研究を行った。(1)平成29年度に導入したキュービックアンビル高圧装置を用いて高圧実験を行うとともに、第一原理計算による解析を行った。(2)グラフェンと六方晶窒化ホウ素を原料としてトポタクティック合成した炭素材料の磁性測定を行い、発現する強磁性の詳細な測定と解釈を行った。(3)リチウムアセチリドLi2C2を合成し、ヨウ素と反応させることにより、さまざまな炭素固体を得た。(4)光触媒応用への展開。(5)アルカリ金属と炭素化合物の相互作用の研究。 (1)については、平成29年度に引き続き窒素含有芳香族分子を有機合成し、高圧印加により重合する反応の詳細を検討した。特に、第一原理計算により、Diels Alder反応類似の反応が起こっていることが明らかになり、国際会議発表を行うとともに論文として出版した。気体発生を伴う爆発的反応については制御可能な条件を探索中である。(2)については、強磁性が原料グラフェンの層数に依存し、単層グラフェンまで剥離した原料を用いた場合が最も磁化率が高いこと、キュリー温度は測定上限の400℃以上であることが分かった。(3)については、グラフェンナノリボン、球状のカーボンスフィアの存在がTEMにより確認された。新しい炭素材料として報告されているC8(オクタカーボン)の存在を示唆するX線回折及びTEM像が得られた。(4)については、測定系を立ち上げ、光触媒活性の測定が可能となった。(5)についてはまだまとまった結果が得られていない。その他、合成した分子の単結晶育成や物性解明など、派生的な結果についても論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
研究体制としては、前年度に引き続き、北海道大学が原料合成と高温高圧装置による物質探索を行い、北大のX線回折、TEM等構造解析に加え、深紫外ラマン分光を行える国内で数少ない設備を持つ秋田大学および超高圧材料科学の中核である物質材料研究機構の参画・指導を得て原料とプロセス開拓を行う。長距離秩序を持たない炭素ではラマン分光が局所構造を知る唯一の手段だが、可視光ではsp2不純物の共鳴増強効果により正確な測定が行えないため、深紫外ラマン分光が必須である。平成31年度は以下の研究を行う計画である。 (1) 縮合芳香族化合物の有機合成と高温高圧処理による新規炭素材料の探索:平成29年度、30年度に見出した高圧下での重合反応を発展させる。(2) 新規炭素材料の光触媒活性など物性・機能に関する測定を開始する。(3) アルカリ金属融液からの炭素析出反応の実験的・理論的研究を行う:アルカリ金属融液に炭化物を融解させてから析出させるとsp2とsp3の混じった炭素ができ条件によりsp2とsp3の比が変化することが明らかになった。電子が非常に過剰な条件での炭素固体の生成については、ダイヤモンドが生成するという報告があるが、詳細はほとんど調べられていないため、条件を変えて検証する。(4) 上記の実験的研究に加え、第一原理計算による高圧反応のシミュレーション等、計算科学的解析を行う。特に、遺伝的アルゴリズムを用いたパッケージUSPEXを導入し、計算の迅速化を図る。
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