研究課題/領域番号 |
17H03381
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
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研究分担者 |
海住 英生 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70396323)
藤岡 正弥 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (40637740)
小俣 孝久 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80267640)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ガラス / プロトン / イオン伝導 / 燃料電池 / 結晶化 |
研究実績の概要 |
200~500℃の温度域で0.02 S/cm以上の伝導度を示すプロトン伝導体は、クリーンなエネルギー源として期待されるバイオマス燃料電池の必須部材である。本研究では、固体電解質の候補として熱的・化学的に安定な希土類元素含有リン酸塩ガラスに注目し、ガラスに含まれるアルカリイオンを水素雰囲気下での直流電圧の印加によってプロトンに置換する手法(APS)を開発した。一方、結晶化に対して安定なリン酸塩ガラス組成の開発に取り組み、現時点で最も安定な35NaO1/2-2SrO-5GdO3/2-5GeO2-53PO5/2ガラスを開発した。このガラスに対して350℃で10時間のAPSを施し、90%以上のナトリウムイオンをプロトンに置換することに成功した。得られた材料はガラス状態を維持しており、そのガラス転移点は280℃、プロトン伝導度は400℃で0.0095 S/cmであった。なお、伝導度の測定には交流インピーダンス法を用い、電極には白金を使用した。伝導度の上限を決めているのは、ガラスの軟化によって電極も変形するため、両者の界面抵抗の上昇ではないかと考えられる。一方、Na濃度を30at%含む30NaO1/2-3MgO-7GdO3/2-3GeO2-57PO5/2ガラスに対して同様なAPSを実施し、ガラス転移点300℃のプロトン伝導体を得た。この材料に対して長時間伝導度測定を実施したところ、390℃において0.002 S/cmの伝導度を100時間維持することに成功した。それ以上の温度では数十時間で結晶化による伝導度の低下が見られたが、さらなる熱的安定性の向上が実現すれば、高いプロトン伝導度の長時間維持を実現できる可能性がある。 今後は、希土類やアルカリ土類酸化物の種類と含有比率の最適化、ガラスの軟化に伴う電極界面抵抗の上昇防止策に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組成の最適化によってプロトン伝導度の最高値0.0095 S/cm達成と、390℃において0.002 S/cmの伝導度を100時間維持することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、400℃で0.0095 S/cmのプロトン伝導度を達成した。また、350℃で100時間連続測定を実施したところ、伝導度は0.0055 S/cmから0.0025 S/cmまで低下した。そこで平成30年度は、その原因を明らかにし、高い伝導度の長時間維持を目指して以下の研究に取り組む。 1.ガラス組成の探索 APSによって得られた材料に対し、エネルギー分散型X線分光、赤外・ラマン分光等のスペクトル測定、熱膨張率測定を実施し、アルカリイオンの置換率、ガラス構造、熱物性等を評価する。また、熱質量分析、四重極子質量分析によって、高温域での揮発物質を同定する。さらに、交流インピーダンス測定、直流分極測定及び水素濃淡電池法による起電力測定を実施する。これらの結果を総合して中温域において高いプロトン伝導度と耐熱性を達成する。 2.燃料電池セルの評価 得られたプロトン伝導体を用いて燃料電池セルを試作する。燃料電池の実用化には、電解質の体積抵抗の低減、電極材料の最適化、および電極-電解質間の界面抵抗の低減によって、発電時のエネルギー損失を最小化することが求められる。これを実現するため、プレス成型機によるガラスの薄板化、パラジウム合金、遷移金属カーバイド等の触媒活性の高いカソード材料の探索、および電極と電解質との密着性の改善について検討する。
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