研究課題/領域番号 |
17H03387
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小松 高行 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特任教授 (60143822)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 単結晶パターニング / 光アクティブ機能 / ガラス / 結晶化 / レーザー |
研究実績の概要 |
1)レーザーによる光アクティブ機能を有する単結晶パターニング工学の創出は、結晶形態及び配向を自在に設計・制御することであり、同時に、結晶配向機構を解明することである。従来の“優先的結晶配向方向”という表現ではなく、その背後にある結晶成長の物理・化学を明らかにすることである。本年度は、パターニングした結晶の構造異方性と配向方向に関する提案モデルを、熱膨張係数の結晶方位異方性から明らかにした(Laser patterning and growth mechanism of orientation designed crystals in oxide glasses: A review , Journal of Solid State Chemistryに掲載受理)。 2)ガラスの結晶化においては、結晶/過冷却液体(ガラス)界面でのひずみエネルギーが大きな役割りを演じる。Gd2O3-MoO3-B2O3系ガラスからの強弾性結晶Gd2(MoO4)3の生成はこれまでにない最適なモデル系である。Gd2(MoO4)3結晶生成に伴うガラス試料の自己微粉化を抑制するガラス組成を提案し、実証した。Gd2O3-MoO3-B2O3系ガラスの結晶化を詳細に調べ、新たにGd4Mo7O27結晶からなる結晶化ガラスの創成に成功した。また、Eu3+-ドープGd4Mo7O27結晶は特異な蛍光スペクトルを示すことを見出した。 3)NiO-Li2O-Nb2O5-SiO2系ガラスからのLiNbO3結晶のレーザーパターニングにおいて、c-軸配向したマイクロサイズLiNbO3微粒子の配列に成功し、レーザーパターニング工学の新たな局面を切り開いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、レーザー誘起結晶化法をさらに深化させ、結晶成長分野および光導波路を中心とする革新的光アクティブデバイス創製にブレイク・スルーをもたらすと共に、 自然の摂理を超える単結晶パターニング工学を創成することを目的としている。レーザーパターニングした光アクティブ機能を有する異方性結晶の構造異方性と結晶配向方向の関係を熱膨張係数の結晶方位異方性の観点から明らかにし、単結晶パターニング工学創成に大きく前進した。結晶成長に対するひずみエネルギーの役割りをGd2O3-MoO3-B2O3系ガラスの結晶化でさらに深く検討し、レーザーパターニングされた強弾性結晶では、ひずみエネルギーが結晶軸の回転をもたらすこと、また母体ガラスの組成制御によりひずみエネルギーを大きく緩和できることを明らかにした。ガラスにおける単結晶パターニング工学の創成には、母体ガラスの不均一ナノ構造の設計/制御が極めて重要であることを見出し、今後の研究の重要な柱であることを提案した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はほぼ順調に進展しており、計画に沿って研究を推進する。本研究で導入した2種類の界面自由エネルギーと結晶成長方位との関係をさらに深め、レーザーによる自然の摂理を超える光機能性単結晶パターニング工学を確立する。ガラスの結晶化では、安定結晶相の生成の前にしばしば準安定相が生成する。準安定相の生成を抑制し、光機能性結晶安定相を初期結晶相として生成するナノスケール不均一構造を有する革新的なガラス創成手法を提案、実証する。さらに、革新的なガラスにおいて光アクティブ機能(第二好調波発生など)を示す安定結晶相のレーザーパターニングを試みる。
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