研究実績の概要 |
1)レーザーによる単結晶パターニングのモデル物質であるマルチフェロイック(強弾性・強誘電性)Gd2(MoO4)3結晶のレーザー走査方向(結晶成長方向)に沿っての結晶軸の回転機構をガラス構造と結晶構造の解析により明らかにした。すなわち、結晶/過冷却液体(ガラス)界面での巨大なひずみエネルギーの発生機構をガラス構造により解明した。自然の摂理を超えるGd2(MoO4)3結晶のレーザーパターニングは、ガラスからの結晶成長のみで可能であることを提案した。2)ガラスの結晶化およびガラス/結晶界面の状態(界面自由エネルギー)の理解には、ガラスの不均一ナノ構造の理解が必須である。これまで蓄積してきたガラス組成と結晶相の関係を基にして、多成分酸化物ガラスにおけるナノ構造を“組成ゆらぎの分布モデル”という概念を用いて提案した。すなわち、ガラスはフラジャイルなナノ領域とストロングなナノ領域から構成されており、ガラス修飾酸化物を多く含むフラジャイルな領域からOstwald則に沿って結晶が成長する。このモデルによって、レーザー誘起結晶化を含むガラス結晶化に対してガラス組成の設計・制御が可能になると共に、光アクティブ機能発現に必須な結晶/ガラス界面の構造(組成)制御にも繋がる。3)レーザー誘起結晶化法を鉄を含むガラス系に展開し、次世代ナトリウム電池用のNa2(Mn,Fe)1P2O7結晶およびマルチフェロイックBiFeO3結晶のパターニングに成功した。前駆体ガラスが鉄イオンを多量に含むことから、極めて弱いレーザーパワーで結晶化が誘起されることを明らかにした。4)光アクティブ機能の発現にとって、極めて重要な前駆体ガラスであるテルライト系ガラスの電子分極状態の特徴を様々な組成に対して明らかにし、ガラス組成設計への指針を提案した。
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