研究実績の概要 |
“水熱反応(Hydrothermal Reaction)”は地質学において地球内部での反応に用いられてきた学術用語であり、高温・高圧下での主に水を溶媒とした反応である。地球内部での鉱物の結晶化や結晶成長の模倣である水熱反応を利用した無機化合物の合成や結晶育成が行われている。本研究では水熱反応を用いた無機化合物の合成において以下のような成果を得ることができた。①新しいビスマス酸化物の探索とその特性評価では、NaBiO3・合物としてNa3Bi3O8、パイロクロア型Ca2Bi2O7、Sr2Bi2O7および結晶性の高いPbSb2O6型BaBi2O6を合成することができた。また、Tc~30 Kの超伝導体であるダブルペロブスカイト型構造の (Ba0.54K0.46)4Bi4O12およびペロブスカイト型構造のBサイトが規則化した(K0.2Sr0.8)(Na0.01Ca0.25Bi0.74)O3およびBa4NaBi3O12 を合成することができた。②パイロクロア型ニオブおよびタンタル酸塩の合成とその銀イオン交換体の抗菌特性では、Nb2O5および非晶質Ta2O5を出発物質とした水熱反応によって合成されるパイロクロア型(K,H)MO3・nH2O(M:Nb,Ta)についてその電気伝導度の測定を行うとともにイオン交換反応によってAg+を導入し、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する抗菌特性を調べた。③新しいアルカリ金属ニオブおよびタンタルフッ化物の発見およびそのMn4+ドープ体の蛍光特性ではAMO3(A:K,Rb,M:Nb,Ta)を出発物質としてフッ化水素水溶液を用いた水熱反応によって新しい化合物であるANaMF7を合成することができた。
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