研究課題/領域番号 |
17H03392
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片桐 清文 広島大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30432248)
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研究分担者 |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 准教授 (00419235)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セラミックス / 光触媒 / 自己組織化 / ナノ粒子 / ハイブリッド材料 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、前駆体から分子設計を行い、自己組織化などの手法を活用して無機ナノユニットを形態制御合成し、それらを階層的に組織化して複合化した高性能光触媒の開発を目指している。初年度である2017年度においては、無機ナノユニットの前駆体となる水溶性金属錯体の合成と、それらを利用した無機ナノユニットの形態制御合成を行った。 まず、水溶性金属錯体については、研究分担者の冨田との連携のもと、チタン、ニオブ、タンタルの水溶性錯体の合成を行った。このうちチタンについては、これを前駆体として用い、水熱合成法によって光触媒としても利用可能なLa2Ti2O7をナノロッドとして合成することに成功した。 また、ZnとGaからなる層状複水酸化物(LDH)について、研究協力者の助言のもと、ナノ粒子として合成することを試み、エチレンオキシドを活用した液相法によってZn-Ga LDHをナノ結晶として合成する手法を確立することができた。また、従来ナノ粒子として合成されているNi-Al LDHナノ粒子等とは異なり、合成時の反応温度が得られるLDHの結晶サイズに大きく影響を及ぼすことも明らかにした。 さらに、無機ナノ粒子の形態制御と一環として、機能性酸化物ナノ粒子をSiO2で被覆したコア-シェル粒子を合成する手法について、オレイン被覆酸化鉄ナノ粒子をモデルとして用い、界面活性剤を利用したSiO2シェルの形成メカニズムを動的光散乱法などを駆使して解析した。この知見をもとに、SiO2シェルの厚みを自在に制御することを可能にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無機ナノユニットの前駆体となる水溶性金属錯体の合成においては、これまでに関連する研究に実績を有する研究分担者の協力のもと、当初の予定通りに完了することができた。また、それらを実際に前駆体として用いた無機ナノユニットの合成として、水熱合成法によるLa2Ti2O7の合成にも成功している。この手法においては、La2Ti2O7をナノロッドとして形態制御合成することもできた。 Zn-Ga LDHのナノ粒子としての合成については、Ni-Al LDHをナノ粒子として合成する手法を開発した研究協力者からの助言に基づいて合成することができた。ここでは、Zn-Ga LDHナノ粒子は、Ni-Al LDHナノ粒子の場合とは異なり、合成時の反応温度が生成するLDHの結晶サイズに大きな影響を及ぼすことも見出した。これを活用し、反応温度を制御することで、得られるZn-Ga LDHナノ粒子のサイズを変化させることにも成功した。これを前駆体に用い、尿素を固体窒素源に用いたGaN:ZnOナノ粒子の合成にも前倒しして着手することができている。 以上を総合的に勘案し、本研究は当初の計画に対し、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度の研究において、水溶性チタン錯体を前駆体として用い、水熱合成法によってLa2Ti2O7をナノロッドとして合成することに成功した。この物質も光触媒としての機能を有しているが、紫外光しか利用できない。そこで、これを酸窒化物であるLaTiO2Nに転換することを試みる。その転換反応においては、従来のアンモニアガスを用いた手法は安全性への懸念があるので、固体窒素源を用いた手法を中心に検討する。また、2017年度の研究で合成したZn-Ga LDHナノ粒子も、水分解可視光応答光触媒として知られるGaN:ZnOへ転換することを試みる。光触媒において活性を向上させるためには、一般的には高い比表面積であるほうが有利とされているので、前駆体となる Zn-Ga LDHナノ粒子からサイズを維持してGaN:ZnOをナノ結晶として合成する手法を探索する。 そのほか、Z-スキーム型光触媒への利用を視野に入れ、酸素発生光触媒と水素発生光触媒となる酸化物光触媒として、SrTiO3やBiVO4の合成にも着手する。 これらの無機ナノユニットを2018年度中に合成し、2019年度に自己組織化や電気泳動堆積法を活用した複合光触媒の構築を行うための準備を完了することを目指す。
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