研究課題/領域番号 |
17H03393
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
堀部 陽一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80360048)
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研究分担者 |
中村 和磨 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60525236)
田中 啓文 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (90373191)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 強相関電子系 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「強相関層状マンガン酸化物(Ca,R)2MnO4 (R:希土類元素)において、構造ドメイン界面での特異な局所構造とそれに関係した局所物性について解明するとともに、新奇物性現象の開拓を行う」ことである。次年度は、初年度に引き続き層状マンガン酸化物Ca2MnO4 のCaサイトに一部Smを置換したCa2-xSmxMnO4 について試料作製および熱処理を行い、双晶ドメインや反位相ドメインなどの様々な構造ドメインの導入および各種ドメインの特徴解明を行うとともに、ドメイン界面近傍の特異な配位環境について顕微鏡学的手法および回折学的手法を併用して調べた。具体的には層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 においてSm濃度x = 0.0 ~ 0.2組成を有するセラミックス試料を作製し、様々な熱処理によるドメイン変化について主に透過型電子顕微鏡を用いた電子回折法および明・暗視野法により調べると共に、ドメイン界面近傍における配位環境について高角度環状暗視野-走査透過型電子顕微鏡法などを用いて明らかにした。さらに熱処理条件の最適化のため、x = 0.0試料よびx = 0.2試料における高温粉末X線回折測定を行い、精密結晶構造解析により本系における構造変化について検討を行った。その結果、Ca2-xSmxMnO4 に存在する反位相ドメインは、c軸方向に沿った酸素八面体回転の回転パターンの乱れに関係することを見出した。さらにこれらの反位相ドメインは、酸素八面体回転を持たない高温構造からの相転移に関係することが分かった。以上の結果から、強相関層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 において、低Sm置換量の領域では酸素八面体回転に関係した反位相ドメインが導入され、特徴的な局所構造を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初年度に引き続き層状マンガン酸化物Ca2MnO4 のCaサイトに一部Smを置換したCa2-xSmxMnO4 について試料作製および熱処理を行い、双晶ドメインや反位相ドメインなどの様々な構造ドメインの導入および各種ドメインの特徴解明を行うとともに、ドメイン界面近傍の特異な配位環境について顕微鏡学的手法および回折学的手法を併用して調べることを目的とした。本目的達成のため、MnO6酸素八面体の回転に関係した構造ドメイン導入を目指し、Ca2-xSmxMnO4 においてSm濃度x = 0.0 ~ 0.2組成を有するセラミックス試料を作製し、熱処理による構造ドメインの導入を試みた。本試料における透過型電子顕微鏡観察および高角度環状暗視野-走査透過型電子顕微鏡法から、反位相ドメインの存在はc軸方向に沿った酸素八面体回転により特徴づけられることを明らかにすることが出来た。特にこれらの反位相ドメインは、酸素八面体回転を持たない高温構造からの相転移に関係することが見いだされた。これらの結果から、強相関層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 において、酸素八面体のc軸周りの回転に関係した反位相ドメインが導入され、c軸方向に沿った酸素八面体回転の分布に依存する局所構造変化を反映することが示唆された。すなわち、本研究目的に関係した構造ドメインの導入とそれに伴う局所構造の解明が達成されたと共に、構造ドメイン制御法の検討が進んでいると考えられ、本研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から、強相関層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 において、酸素八面体のc軸周りの回転に関係した反位相ドメインの導入と、酸素八面体回転分布に依存する局所構造変化が示唆された。さらにこれらの反位相ドメインは、酸素八面体回転を持たない高温構造からの相転移に関係することが見出された。これらの結果を元に、来年度の研究では、反位相ドメイン界面における特異な局所構造の制御と、局所構造に関係した電子状態の理論計算を試みる予定である。また、本年度に引き続き、置換化学種や化学的置換量の調整・熱処理条件の最適化により、強相関層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 の低Sm置換組成領域における、双晶ドメインなどの別種の構造ドメインの導入とそれらの特徴解明を試みることを目標とする。そのためまず熱処理に伴うドメイン変化について、透過型電子顕微鏡を用いた電子回折法および明・暗視野法による実空間・逆空間の同時観察により明らかにする。これらの結果の比較から、反位相ドメイン界面近傍における局所構造の制御について検討を行うとともに、その結果を利用して第一原理計算を用いたドメイン界面における電子状態の理論計算を行い局所構造に関係した諸物性について予測を行う。
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