研究実績の概要 |
本研究の目的は、「強相関層状マンガン酸化物(Ca,R)2MnO4 (R:希土類元素)において、構造ドメイン界面での特異な局所構造とそれに関係した局所物性について解明するとともに、新奇物性現象の開拓を行う」ことである。本年度は、層状マンガン酸化物Ca2MnO4 のCaサイトに一部Smを置換したCa2-xSmxMnO4 について試料作製を行い、反位相ドメインなどの構造ドメインの特徴解明およびドメイン界面近傍の特異な配位環境について顕微鏡学的手法および回折学的手法を併用して調べるとともに、化学的置換量の調整や熱処理条件の最適化により、強相関層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 の低Sm置換組成領域における、反位相ドメインの導入および制御と、局所構造に関係した電子状態の理論計算を試みた。具体的には層状マンガン酸化物Ca2-xSmxMnO4 のSm濃度x = 0.0 ~ 0.2組成セラミックス試料において、主に透過型電子顕微鏡を用いた電子回折法および明・暗視野法による局所的結晶構造およびナノ組織直接観察により、相転移温度近傍での温度制御を行うことにより反位相ドメインの厚さ方向のサイズと、全体的な体積分率の系統的な変化が可能であることが見いだされた。またこれらの結果を利用することにより、本系における局所構造制御が可能であることを見出した。さらに顕微鏡学的手法により検討された局所構造を反映された配位環境を用いた第一原理計算により、これらのドメイン界面近傍の局所領域が特異な電子構造を持つ可能性が示唆された。
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