研究実績の概要 |
次世代誘電体デバイスの開発を目指した新たな試みとして、層状化合物の単層剥離により得られる酸化物原子膜「酸化物ナノシート」に注目し、0.5~3 nmの臨界薄膜での誘電・強誘電物性の検証とともに、原子層エンジニアリングによる高機能誘電体デバイスの開発を行う。本年度は、高誘電性ナノシートの特異物性の解明と新規高誘電・強誘電性ナノシートの開発を行った。 巨大誘電特性、サイズ効果フリー機能など特異物性を有するペロブスカイトナノシートをモデルケースに、ナノ領域で実現する特異物性の機構解明を進めた。この目的のために、ペロブスカイト1格子単位(~0.4 nm)で厚みを精密に制御したペロブスカイトナノシート (Ca2Nan-3NbnO3n+1; n = 3 -6)を合成し、走査型プローブ顕微鏡により0.5~3 nmの臨界膜厚での誘電・強誘電物性の検証を行った。その結果、ペロブスカイトナノシートでは、従来材料(BaTiO3, PZT)で臨界膜厚とされる~1.5 nm(3格子)以下でも誘電・強誘電物性が維持されることを確認した。 さらに、誘電体デバイス応用に好適な、高い誘電率と優れた絶縁性を有する新規高誘電・強誘電性ナノシートの探索を行った。研究代表者がこれまで開発したペロブスカイトナノシート(Ca2-xSrxNb3O10, εr = 210 ~ 240)に対して、第一原理計算に基づく材料設計により元素置換や分極構造の最適化を行い、誘電特性の更なる向上やバンドオフセット制御による絶縁性、耐電圧特性(> 4MV/cm)の制御を試みた。その結果、高誘電率化には八面体層数の制御やBi, Tiの置換が有効となること、特にCa2Nan-3NbnO3n+1、Bi置換Ca2-xSrxNb3O10では400以上の高い誘電率が実現し、Ca2Na2Nb5O16では強誘電体特性が発現することを明らかにした。
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