研究課題
次世代誘電体デバイスの開発を目指した新たな試みとして、層状化合物の単層剥離により得られる酸化物原子膜「酸化物ナノシート」に注目し、0.5~3 nmの臨界薄膜での誘電・強誘電物性の検証とともに、原子層エンジニアリングによる高機能誘電体デバイスの開発を行う。本年度は、ナノシートの原子層エンジニアリング技術を検討し、ナノシートをベースとした高機能誘電体素子の開発を目指す応用研究を推進した。これまでに開発してきたディップコート法、ラングミュア・ブロジェット法に加え、ナノシート1枚を光学顕微鏡下でハンドリングする新手法を開発し、ナノシートの精密配列、複合累積、接合を可能とする原子層エンジニアリング技術を開発した。上記研究で確立した技術を高誘電性ナノシートに適用し、各種誘電体デバイスの応用研究を推進した。高誘電性ナノシートの原子層エンジニアリングにより、現行コンデンサのBaTiO3膜に対して1/50の薄膜化に相当する10 nmレベルの誘電体超薄膜を形成し、電極層と交互に積層することで超薄層積層キャパシタ素子を作製した。キャパシタ素子の特性評価を行い、現行技術で到達困難な10 nm以下の薄膜化と高誘電、絶縁機能(εr >500, リーク電流密度<10-7 A/cm2@1 V)を同時に実現する高容量コンデンサの開発に成功した。あわせて動作性、耐久性、耐熱性の向上などに資する材料設計、素子設計についても検討し、200℃以上の高温環境下で安定動作する高温コンデンサの開発に成功した。さらに、本研究で開発したナノシートの原子層エンジニアリング技術を応用し、高機能ナノシートFET、ペロブスカイト太陽電池、アクチュエータ素子の開発に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたナノシートの誘電体デバイスの開発に成功した。さらに、電池材料への応用など、当初予期していない新展開も見られており、おおむね順調に進展している。ナノシートの新規応用については、研究の展開に合わせて新たな連携先をさらに開拓し、本研究の効果的な推進、展開を図る。
2018年1月にNIMSからの異動により、研究場所、体制の変更があったが、2018年度中に実験室、装置も立ち上げが終了し、研究を加速できる体制にある。最終年度となる2019年度は、昨年度までに取り組んだナノシートの原子層エンジニアリング技術の検討を進め、ナノシートをベースとした高機能誘電体素子の開発を目指す応用研究を推進する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 13件、 招待講演 15件) 図書 (2件)
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