研究課題/領域番号 |
17H03396
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小平 哲也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (40356994)
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研究分担者 |
阪東 恭子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50357828)
池田 拓史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60371019)
西 宏二 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (70535335)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゼオライト / LTA / 結晶成長 / 単結晶 / アルミノケイ酸塩 / リン酸ガリウム塩 |
研究実績の概要 |
本研究において主題となるアルミノケイ酸塩が骨格を形成するLTA型多孔質結晶の単結晶合成条件探索を本年度も継続して実施した。結晶サイズの増大に関与する本誌的因子の解明を主目的とした。 合成溶液中に含まれるアルカリ量が結晶サイズに影響し,低アルカリ量を実現することの重要性を確認した。更には,そのアルカリを合成溶液にどのように添加するのかも結晶サイズに顕著に寄与する。従来技術ではアルカリ量は考慮されず,Alイオンのキレート剤として働くトリエチルアミン量の制御が着目されていた。この先入観から大きく脱却し,一般的ゼオライト合成における常識の側面からも低アルカリ環境での合成はコペルニクス的展開と言える。結果,最大サイズの単結晶合成法として知られる微小重力環境(宇宙空間)の利用と同等サイズの単結晶の合成を実験室にて実現した。 一方,リン酸ガリウム塩のLTA型多孔質結晶においては,その高収率合成において,大きな進展が見られた。既知合成条件では当該結晶の収率は原料中のGa, P原子数に対して約60%と報告されている。これに対し,本研究では合成溶液に添加するフッ化水素量を調整すると,収率約90%となった。これにより,原料中のGaやP元素に着目したNMR等の計測手段により,合成溶液から最終生成物に至る化学状態変化を追跡できるようになった。このほか,合成において用いられる有機構造指向剤のジ-n-プロピルアミン量を精密に制御したところ,わずかな量の変化により,6配位Ga原子のリン酸塩結晶から4配位Gaを有するLTA結晶まで,複数の結晶構造が出現することを見いだした。このような多彩かつ合成原料組成に敏感な合成環境は,アルミノリン酸塩系多孔質結晶でもあまり例が無く,Ga原子周辺の局所的構造歪みなどが関係していると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間終了までに世界最大サイズのアルミノケイ酸塩型LTA単結晶の合成,及び結晶サイズ制御に関与する合成条件を解明することに研究期間内に達成できるおおよその目処が付いたことがその理由である。ただし,結晶サイズの増大を図るに伴い,合成の長時間化が顕著となるため,多様な合成条件を試すことは困難となっている。故に,軸となる変数を絞った合成や合成時間の短縮化が求められる。 他方,リン酸ガリウム系は2019年度早々にX線吸収分光測定を本格的に開始する目処が立っており,高収率なLTA型結晶の合成条件に的を絞った,Ga原子周辺の局所構造がどのように合成水溶液と最終生成物であるLTAとの間で相違があるかどうかを議論できる環境を整えたため。
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今後の研究の推進方策 |
LTA型単結晶のサイズを増大させる基本因子を解明できたため,継続してその合成を行い,真に世界最大サイズの単結晶を実現し,知財化を図る。ただし,現状でも合成反応の完了に6ヶ月程度を要する。合成条件探索と産業応用を狙うためには反応時間の短縮が切に望まれる。結晶サイズの増大と反応時間短縮は一般に相反することと想定するが,常識にとらわれずにその方法論も併せて挑んでいく。また,これまで予備実験を進めてきた,X線小角散乱法及びレーザー光散乱法による粒子径評価技術を最終目的のLTA型単結晶合成系に適用し,初期段階から最終産物に至るまでの粒子成長と結晶化過程・出発合成水溶液の化学組成との相関を明らかにしていく。 他方,リン酸ガリウム系LTA結晶においては,X線吸収分光を2019年度に実施する分析の主たる方法として特に合成水溶液中のGa原子局所構造の理解に用いる。
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