研究課題
今年度はMg2Siを母相とするコンポジット試料の熱電性能を向上することを目的とし、金属分散相の組織形態と熱電性能の関係を調査した。組織形態の変化は、母相と分散相の界面における障壁高さの変化をもたらし、電気伝導や熱伝導に影響を与えると考えた。小さい粒径(1~10 μm)のNi相を分散させた、Ni/Mg2Siコンポジット試料を作製した。熱電性能を測定したところ、Mg2Siと比較して、0.01Ni/Mg2Siコンポジット試料の電気伝導率は減少,ゼーベック係数は増加した。一方、Ni/Mg2Siコンポジット試料の熱電性能を有効媒質理論を用いて計算したところ、Niの体積分率が大きくなるほど電気伝導率は増加、ゼーベック係数は減少することがわかった。これらの結果より、1~10 μm 程度のNi分散相のサイズでは、Ni分散相と母相のMg2Siの界面の障壁高さが、電気伝導を阻害しない程度まで低くなっていないことが予想される。固相反応法で(Mg1-xAlx)2Si試料を作製したところ、x=0以外の全ての試料でAl相が確認され、格子定数に有意な変化がみられなかったことから、Al/Mg2Siコンポジット試料になっていることがわかった。この試料の熱電性能を測定した結果、電気伝導率の増加を反映して、Mg2Siよりも高い出力因子を得た。以前我々が放電プラズマ焼結で作製した0.75Al/Mg2Siコンポジット試料よりもzTは高くなり、(Mg0.98Al0.02)2Si試料で最大のzT=0.60 (800 K)を達成した。1 μmサイズ以下のAl相がMg2Siの粒界に存在していて、網目状構造を形成していることが出力因子とzTの増大につながったと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、分散相の組織制御によりコンポジット試料の熱電性能を向上することを目的とし、様々な合成法を用いてNi/Mg2Siコンポジット試料とAl/Mg2Siコンポジット試料を作製した。結果として、網目状組織の分散相を導入することでzTが増加することを明らかにできたことから、順調に進展していると結論した。
これまで作製してきたMg、Al、Ni/Mg2Siコンポジット試料はいずれもn型であった。金属分散相の組織制御により、熱電性能を向上する指針が得られたことから、今後はMg2Siを母相とするp型のコンポジット試料の作製を試みる。引き続き、n型コンポジット試料の熱電性能向上を進めるとともに、得られた知見をp型コンポジット試料に応用することで、n型、p型両方の高性能コンポジット試料を得る。
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Materials Transactions
巻: 59 ページ: 1041-1045
10.2320/matertrans.E-M2018815