研究実績の概要 |
今年度は、Mg2Siを母相とするn型のコンポジット試料の熱電性能を調査するとともに、p型のコンポジット試料の作製を試みた。 n型のコンポジット試料では、一般化有効媒質理論を用いて、金属相をAl, Bi, Co, Hg, K, Mg, Na, Ni, Pd, Pt, Rbとしたときの熱電性能を計算した。300 Kにおいて、出力因子が向上した元素はAl, Bi, Co, K, Mg, Ni, Pdであった。一方、300 Kにおいて無次元性能指数zTが向上した元素はBi, Co, K, Niであった。 Ni/Mg2Siコンポジット試料の界面における微細構造と電気輸送特性を調べるために、Ni/Mg2Si二層積層試料を焼結温度を変えて作製した。透過電子顕微鏡観察から、NiとMg2Siの界面は急峻ではなく、NiがMg2Si側に拡散しており、Niから数10~数100μmまでの領域にNi-Mg-Si化合物が存在していることがわかった。Ni-Mg-Si化合物が存在している領域の幅は、焼結温度が高いほど広くなった。また、界面における電気輸送特性を調べたところ、NiとNi-Mg-Si化合物が存在している領域の間の界面に抵抗のとびが見られた。さらに、Ni-Mg-Si化合物が存在している領域を超えると、抵抗が急激に増加した。 以上のことから、Ni/Mg2Siコンポジットで高い出力因子とzTを得るためには、Niの存材料を30%よりも多くすることが必要であると結論される。 Znを金属相としてコンポジット試料を作製したところ、ゼーベック係数が正になった。このことからp型のコンポジット試料の作製に成功し、Al/Mg2Siに匹敵する出力因子数mW/mK2を達成した。
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