本研究は,Zn系めっき鋼板の耐食性を革新的に向上させることを目的として,その優れた耐食性が現在注目されているZn-Al-Mg合金について,高耐食化機構の解明とさらなる耐食化への指針を得ることを最終的なねらいとしている.そのため,本研究のミッションとして,添加元素でありながら依然としてその耐食性向上機構が未解明であるMg,Alの作用機構を明らかにすることを目的とした.Zn-Mg,Zn-Al-Mg合金の耐食性評価として,日本ウエザリングテストセンターの銚子暴露試験場において1年間暴露試験したものについて,表面観察,ラマン分光分析による腐食生成物の同定を行った.その結果,Mg濃度の違いによるZn-Mg合金上における腐食生成物の堆積状況や堆積量に明確な差異はみられなかった.さらに,腐食生成物をエネルギー分散型X線分析器を使って,組成分析した結果,腐食生成物から主にZn,O,Cによるピークが観察された.Mgによるピークは観察されなかった.そこで,次に,顕微ラマン分光分析を実施した結果,暴露後のZn-Mg合金の表面にも水酸化マグネシウム(ブルサイト)に由来するピークはほとんど検出されなかった.観測されたピークは,塩基性炭酸亜鉛(ハイドロジンサイト)もしくは塩基性塩化亜鉛(シモンコライト)によるものであった. 最後に3年間の結果をまとめ,Mg,Al添加による高耐食化機構と耐食性向上指針をまとめることで研究を総括した.
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