研究課題/領域番号 |
17H03401
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
遠藤 守信 信州大学, 先鋭領域融合研究群カーボン科学研究所, 特別特任教授 (10021015)
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研究分担者 |
竹内 健司 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (20504658)
林 卓哉 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (80313831)
Cruz Rodolfo 信州大学, 先鋭領域融合研究群カーボン科学研究所, 特任教授 (30597878)
モレロス・ゴメス アーロン 信州大学, 先鋭領域融合研究群カーボン科学研究所, 特任准教授 (00793746)
オルティス・メディナ ホスエ 信州大学, 先鋭領域融合研究群カーボン科学研究所, 特任准教授 (30793765)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機能性複合材料 / 逆浸透膜 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
多層カーボンナノチューブ(CNT)とポリアミド(PA)の複合化膜を逆浸透(RO)膜の活性層に応用して、脱塩性、透水性、耐ファウリング性で特色のある有望なRO膜が開発された。本研究は当該膜の高性能発現の基礎科学の確立を対象とし、その成果をRO膜一般の科学に展開することを目指している。ポリアミド(PA)膜は、海水淡水化処理用の逆浸透膜として多く用いられている。しかしながら、海水中の天然有機物(NOM)によるファウリングメカニズムはまだ充分には解明されていない。2年目のH30年度は、市販PA膜、ラボPA膜およびCNT/PA複合膜において、NOMフミン酸(HA)またはアルギン酸塩を含むNaCl溶液を用いたクロスフロー透水評価による耐ファウリング試験結果を解析した。特にNOMファウリング過程の分子レベルの現象を解明するために分子動力学(MD)シミュレーションを独自に開拓して検討した。それにより、低分子量のフミン酸は、PA構造の表面の窪みに結合してそれが大きな表面粗さによって引き起こされる不可逆的な吸着につながることを明らかとした。さらに、より大きなアルギン酸分子は、その大きなサイズによって小球状から非コイル状へと形状が変化するために異なる吸着メカニズムが考えられる。具体的には、アルギン酸塩はCa2+を介して結合するか、またはそれが伸びて成長して表面に広がる。付着の違いは表面粗さに密接に関連しているように推測され、CNTを複合することでより平坦な膜表面を誘発し、それが本質的に優れたNOM防汚挙動の鍵となることを示した。特にMDシミュレーションによってフミン酸などの小さな分子の初期付着を防ぐために必要な主に分子レベルでのPA表面粗さと分子移動度の重要性を示した。また、CNTが分子スケールで膜の表面上の粗さおよびポリマーの移動度を減少させる可能性を示した。ここでの知見はROの広範な耐ファウリング性付与に重要な知見を与えるものである(論文印刷中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CNT/PA複合膜の高度な耐ファウリングメカニズムを解明して論文発表し(印刷中)、同膜の高性能化の要因とさらなる性能向上に寄与することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標を達成すべく、今後以下の検討を効率的にさらに進める。①セルロースナノファイバー(CNF)のPA添加膜の機能発現メカニズムと膜構造解析、②CNF-CNT/PA複合膜のロバスト性の発現メカニズムへの拡張
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