研究課題/領域番号 |
17H03402
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
中村 篤志 静岡大学, 工学部, 准教授 (50402243)
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研究分担者 |
久保野 敦史 静岡大学, 工学部, 教授 (70234507)
下村 勝 静岡大学, 工学部, 教授 (20292279)
武田 正典 静岡大学, 工学部, 准教授 (80470061)
松原 亮介 静岡大学, 工学部, 助教 (60611530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / 生体材料 / 先端機能デバイス / 電子・電気材料 / 複合材料・物性 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、大面積の直接成長したグラフェン表面を有機半導体膜で化学修飾化を施した電界効果型増幅器のセンシング層を形成し、再生可能で高感度・100万桁の検出ダイナミックレンジを有するバイオFETを開発することである。2インチ相当面積の基板を用い、残留金属不純物の無い直接成長されたグラフェン層の二次元ハニカム原子配置上を、蒸着重合法で、生体物質と特異結合する官能基を有する有機半導体膜を配向制御堆積して生体分子認識機能を有する分子プローブ固定されたグラフェンFETを作製することを研究目標としている。具体的な評価項目は、分子吸着機能を用いて、特異的に捕獲したタンパク質の観察や局所的相互作用の評価、応用として、複数タンパク質の存在下での微量の目的タンパク質の高感度検出や、表界面における立体障害等の構造を視覚化し、本素子のバイオ応用への有効性を実証する計画である。H29年度は、大面積直接成長グラフェンを用いたFETの実装プロセスを確立し、化学修飾膜形成のための蒸着重合成長条件の最適化を行った。具体的には、1. 大面積直接成長グラフェンのFETゲート構造の最適化、2. 蒸着重合膜の成長条件の最適化が成果として得られた。期間内に国内会議5報、投稿論文1報を成果として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の研究計画目標は、大面積直接成長グラフェンを用いたFETの実装プロセスを確立し、化学修飾膜形成のための蒸着重合成長条件の最適化を行うことである。当初の研究計画目標を達成したので下記に詳細を記す。 具体的な研究達成項目は、1. 大面積直接成長グラフェンのFETゲート構造の最適化、2. 蒸着重合膜の成長条件の最適化が成果として得られた。 1.については、アルコールCVD法を用いた直接成長グラフェン薄膜の高品質化では、先行研究と遜色ない欠陥の少ない大面積(2インチ基板相当)の薄膜をSiO2/Si基板上に得ることが出来た。さらにデバイスプロセスの最適化を行い、高移動度グラフェンFET(移動度約8000cm2/Vs)の作製に成功した。電磁界シミュレータによる電極構造の設計を試み、リソグラフィーのマスクを作製し、デバイス構造をデザインした。このデバイス構造を次年度に実現させる予定である。2.については、グラフェン表面の結晶構造であるハニカム原子配列をテンプレートに用いたポリアミド酸薄膜の蒸着重合に挑戦した。炭素原子のsp2結合によるπ電子結合とペリレン骨格を有する有機材料とのπ-πスタッキングを積極利用した配向制御が目的である。本年度に改造を施した多元有機原料蒸着による蒸着源ヒーターによってモノマーの蒸着スピードをコントロール出来るようになり、蒸着重合膜の配向制御並びに組成制御が可能になった。これらの薄膜はグラフェン表面を化学修飾させセンシング層の役割を持つことが期待される。そこで、さらに研究計画内容を前倒しでbio-FETの作製・検出を実施した。グラフェンFET構造をプロセスし、実装した。pH,イオン濃度、アミノ酸濃度調整した試験溶液に対しFETの動作を確認した。さらにグラフェン化学修飾のための蒸着重合法による有機薄膜の成長と構造評価によりセンシングメカニズムを考察した。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度において研究計画を前倒ししてグラフェンFETバイオセンサの試作とpH変化によるプロトン検出、生体に含まれる金属イオン検出を行った。 高感度のバイオFETの実現にむけて、直接成長グラフェンの高品質化、さらにグラフェン表面を化学修飾するための有機薄膜蒸着重合膜の最適条件を用いてグラフェンFETバイオセンサによる、pH応答、金属イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウムイオン)の濃度検出結果より、検出分解能30mV/pH、並びに検出可能イオン濃度範囲は10^-6M~10^-3Mで測定可能であることが分かった。本研究課題で提案している新規構造の化学修飾膜を有するグラフェンバイオセンサーのセンシング部においては、表界面における二次元ハニカム原子構造は有機薄膜の配向制御を実現する上で重要な足場となることが分かり、それが高感度検出の決め手になることが予想できる。従って、グラフェン薄膜のみならず二次元層状物質の創製・成長とデバイス化も新たに研究項目に追加し、研究目的である高検出ダイナミックレンジを有するバイオFETの実現を加速させたい。さらに、実用的なバイオセンサの使用例として、例えば血中における非識別検出が挙げられ、それはセンサ表面の3次元的なナノ構造、多孔質形状が有効であることが分かった。それを実現化するため、グラフェン・二次元層状物質並びに触媒材料のコンポジットの多孔質センシング層をFETに積極的に取り入れ、バイオFETの作製に取り組む。
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