Nb-TiNi合金の圧延・熱処理による組織変化と水素透過度の関係について調べた。Nb19Ti40Ni41合金は、鋳造状態でNb相とTiNi相からなる層状型共晶組織を形成する。この合金を室温で圧延熱処理すると、層状組織が消失してNb相がTiNi相中に析出した粒状組織に変化した。組織の粒状化は、圧延率、熱処理温度が高いほど短時間で進行し、Nb粒のサイズも増大することがわかった。層状合金の水素透過度は400℃で約1.0(molH2m-1s-1Pa-0.5)であるが、粒状組織への変化とともに低下した。Nb相の連続性が高い層状組織から連続性の低い粒状組織に変化したことが原因である。しかし、類似した粒状組織に変化したにもかかわらず、圧延の有無により水素透過度に差が生じた。圧延を行わない場合は、1100℃で1時間熱処理した合金の水素透過度は0.5(molH2m-1s-1Pa-0.5)であるのに対し、圧延後に熱処理した合金の水素透過度は0.2(molH2m-1s-1Pa-0.5)程度であった。EBSD解析に結果、圧延なし合金では、Nb相とTiNi相がcube-on-cubeの関係にあるのに対し、圧延後に熱処理した合金では、ランダムな方位関係が観察された。以上より、両相の方位関係が水素透過度に大きな影響を与えることがわかった。 この合金の水素化の過程を放射光を用いて調べた。この2相合金を400℃で水素化すると、水素化の初期にNb相が単相状態で膨張するが、中期にはNb相が格子定数が大きい相と小さい相に相分離した。その後、格子定数が小さい相が膨張し、最終的に単相状態になることがわかった。しかし、Nb単相合金を水素化した場合は、水素化の過程で相分離が起こらないことがわかった。
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