研究課題
現状,耐熱性アルミニウム(Al)合金に分類される2618合金(Al-2.3Cu-1.6Mg-1.1Fe-1.0Ni (wt%))は,自動車用エンジンのターボチャージャにおける圧縮機内部の金属製羽根車(インペラ)に使用されている.2618合金の適応限界温度は160~180℃であり,エンジン高効率化には圧縮機内部の高温・高圧化による圧縮比向上の観点から,高温強度の向上が要求される.本研究では,200℃以上の耐用温度を実現するAl鍛造合金の開発を目指し,ニッケル(Ni)基超合金(代表的な耐熱材料)の優れた高温強度を実現する組織形態の着想を基に,体積率10%以上の金属間化合物相により強化されるAl基超合金の設計を試みた.実用の観点から汎用元素であるMg,Znに着目し,熱力学データベースを利用した計算状態図(熱力学計算)を基に新たな合金(Al-5Mg-3.5Zn (at.%))を設計した.設計合金は微細析出形態を有する安定な金属間化合物相であるAl6Mg11Zn11-T相により強化される.200℃にて予時効を施した設計合金は,150℃から200℃の温度域で高い%耐力を示す.特に,インペラ部材使用想定温度に相当する200℃における本合金の耐力(約260 MPa)は,現状インペラに適用されている2618合金や同じ成分系の高強度材である7075合金を凌ぐことを実証した.また,本合金は比較的良好な室温靭性を示す.本合金の大型試作品(大型の鋳造ビレット)を作製し,400℃以上の高温において良好な成形性(押し出しによる加工性)を有することも実証した.以上の結果から,本設計合金は新たなインペラ用の部材として有望である.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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