本申請課題は、バイオデバイス・創薬・燃料電池などの開発に必要不可欠な精密液体制御・操作の革新を目指し、微細構造流路の動的濡れ挙動を駆動力とした省エネルギープロセスの開発および環境応答型液体操作の実現を試みるものである。具体的には、1)生物のもつ特異な液体操作表面を模倣した流路構造を作製し、2)表面化学組成を制御するために刺激応答性分子を表面修飾し、3)微細構造と表面化学組成の制御により動的濡れ挙動を環境応答性させ、環境処理に有用な液体分離プロセスや創薬に結びつく微量反応場などの精密な液体操作の実現を図る。 本年度は、これまでに確立した鋳型法で作製した微細構造流路のパターンを形成し、シランカップリング法で末端に親水性官能基または疎水性官能基もつ化合物を導入することで、界面エネルギーの違いより液種選択的な流路機能の導不通制御を試みた。また、流体の組成に依存した液体輸送現象の違いを利用した、バイオセンサー・分離プロセス・自発流体輸送・輸送効率化等の流体輸送制御システムの構築を検討した。 具体的には、模倣流路構造の動的濡れ挙動を表面化学組成制御により変化させることで、動的濡れ挙動には輸送を支配している前進接触角と付着を支配している後退接触角があり、その度合いを制御することで、ある溶媒中でのみ混溶しない液体が流路を流れる環境依存型の微小流路を形成した。例えば、オイル中の微量の水のみを輸送可能な流路など、オイル中の不純物である水を効率よく除去するプロセスに応用できる。また、微量の液体の反応場としても利用可能であり、接触および脱着が液中への出し入れのみで可能となる。 本申請課題で達成した液体操作プロセスは、これまでに無い新奇な液体の動的濡れ挙動を利用しているため、今後の応用研究に取り組む際の新たな現象も期待でき、その現象に応じた液体操作プロセスの開発が期待できる。
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