研究課題
最近、研究代表者は、不安定なbcc系Ti合金において、「室温時効に伴ってDiffuse ω構造が形成され、弾性率が大きく増加する」という従来のω変態理論で説明不可能な現象を発見した。本研究では、この室温時効に伴うω変態を説明可能な新たな相転移論の構築を目的としている。本年度は、室温近傍 (273~323 K) の温度下において、時効に伴う弾性率変化を測定した。さらに、時効後の試料に対するX線回折測定を実施した。その結果、時効に伴う弾性率増加、すなわち時効に伴うDiffuse ω構造の形成挙動は時効温度に依存し、時効温度の増加に伴ってDiffuse ω構造の形成が促進されることが明らかとなった。さらに、Eshelbyの楕円体介在物理論に基づいて、ω相形成時の弾性ひずみエネルギーの計算を実施し、ω相の相転移速度が0.20 eV程度の極めて小さな活性化エネルギーを有する相転移の素過程に対応する動的な原子面のつぶれとω相の核生成に起因した活性化エネルギーに支配されていることを明らかにした。加えて、bcc/ω相間の界面エネルギー、添加元素がbcc構造とω相の相平衡に与える影響を考慮して、非熱的ω変態温度、Diffuse ω構造形成の形成温度およびω変態速度を説明するための新たな相転移論を熱力学、統計力学、微視的弾性理論および核生成理論に基づいて構築した。その成果として、熱ゆらぎによって生じる統計的な合金組成のゆらぎが室温で凍結された凍結組成ゆらぎによって室温近傍でのDiffuse ω構造形成が引き起こされていることを明らかにした。さらに、室温時効に伴うDiffuse ω構造の形成は、従来の無拡散変態である非熱的(非等温)ω変態および拡散型の熱的(等温)ω変態とは異なり、室温近傍での時効によって無拡散で変態が生じる無拡散等温ω変態と名付けた新たな相転移であることを示した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Materials
巻: 3 ページ: 43604
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鉄と鋼
巻: 105 ページ: 1080-1089
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