研究課題/領域番号 |
17H03415
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 弘行 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60294021)
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研究分担者 |
趙 研 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00633661)
永瀬 丈嗣 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (50362661)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / 社会基盤構造材料 / 転位 / 格子欠陥 |
研究実績の概要 |
AlxCoCrFeNi合金およびCoCr1+yFeNi1-yMn合金において、x≧0.3, y≧0.25で第二相の析出を確認した。とりわけ、Al0.3CoCrFeNi合金およびCoCr1.25FeNi0.75Mn合金では、1000℃以下において、それぞれNiAl相およびシグマ相が粒界より優先的に析出することを確認した。その恒温変態曲線を作成したところ、いずれの合金においてもノーズ温度は800℃-900℃程度で、析出までに要する時間は10秒程度と極めて短いことが判明した。しかしながら、双晶粒界等の低エネルギー粒界からは析出は生じないことから、エネルギー的に有利な高エネルギー粒界にて高速析出が生じることがわかった。さらに、圧延再結晶時には、せん断帯から微細なNiAl相およびシグマ相が高速析出することで、結晶粒が著しく微細化することが確認された。例えば、800℃1hの再結晶処理後の平均結晶粒径は、Al0.3CoCrFeNi合金では0.7μm、CoCr1.25FeNi0.75Mn合金では、1.4μmであった。さらに、平均結晶粒径と析出物のサイズ、体積率との関係は、修正Zener-Smithモデルとよい一致を示したことから、NiAl, シグマ相といった析出物による粒界ピン止め効果が結晶粒微細化に繋がっていることが明らかとなった。さらに興味深い点として、これら析出物は粒界には安定に存在するが、粒成長時に粒界から外れた析出物はfcc粒内に再固溶することを確認した。このことは、粒界でのみハイエントロピー状態が崩壊し、第二相の析出が有利になっていることを示唆する。なお、x=0.4, 0.5, y=0.35でも、NiAl, シグマ相の析出に伴い、著しい結晶粒微細化が達成されることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、ハイエントロピー合金特有の粒界での第二相の高速析出挙動について明らかにすると共に、析出物のピン止め効果に由来する結晶粒の微細化機構を明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度に得られた知見を活かして、加工熱処理条件や化学組成(x, y)を最適化することで、非等量配合ハイエントロピー合金の更なる結晶粒微細化を達成する。さらに、それら合金の変形挙動を変形後の組織の静的観察のみならず、TEM, SEM-EBSDを用いたサイズスケールの異なるその場観察法を駆使して解明する。
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