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2018 年度 実績報告書

リチウム合金を用いた活性窒素生成における反応メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H03417
研究機関広島大学

研究代表者

宮岡 裕樹  広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (80544882)

研究分担者 礒部 繁人  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10564370)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード窒素解離 / リチウム合金 / 窒化物合成 / 擬触媒プロセス
研究実績の概要

本研究では,窒素(N2)を可逆的に解離/再結合可能なリチウム合金を用いた活性窒素の生成及びその利用技術に関する新たな学術領域を創出するための基礎を確立することを目的とする。具体的には,LixM合金の作製,熱力学及び動力学特性の評価,物性評価,電子顕微鏡等を用いた観察,窒化物合成特性評価を行う。
NH3合成特性を評価するためのガス流通式装置を作製した。この装置では,窒素,水素,アルゴン,或いは窒素-水素混合ガス等を導入することができ,試料部は500℃程度まで加熱可能である。NH3ガスの定性,定量分析には長光路ガスセルを用いた赤外吸収分光を用いた。この装置を用いて窒素-水素(モル比1:3)混合ガスをLi-Sn合金に導入しNH3合成特性を評価した結果,NH3生成量は400℃で400 ppm程度であり,熱力学平衡から予想される理論生成量に比べ低い値となった。これは,触媒プロセスとして用いる場合にはLi-Sn合金の活性が低いことを示しており,ガススイッチングによる擬触媒プロセスを用いたNH3合成技術として用いる方が望ましいと考えられる。
TEMを用いたLi-Sn合金の窒化反応のその場観察について,課題をであった窒素ガスの導入方法を再検討し,実験を行った。結果として,酸化物の生成は避けられなかったが,合金粒子と酸化物層の界面に窒素が存在することが明らかとなった。これは,窒素との反応により合金表面に生成した窒化物が不純物である酸素と反応したことを示唆している。従って,この結果は,合金内部のLiが表面に拡散し窒素と反応するという,本研究で提案するモデルと矛盾しない。比較試料として金属Liの窒化反応についてもTEMその場観察を行ったところ,合金とは異なるプロセスで窒化が進行することが示唆された。
Li金属,作製したLi-Pb合金,Li-Ga合金,Li-Al合金の窒化反応特性の評価を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

試料合成について,研究計画に沿って14族以外の合金の作製を実施した。異なる組成比の合金の混相が得られた試料については,今後条件の最適化が必要である。試料評価については,計画していた熱分析,相同定,化学状態分析等を実施した。また,Li金属の窒化反応特性評価も行った。
環境セルを用いたその場TEM観察について,前年度の課題であった窒素導入方法について検討した。結果として,酸化物の生成を抑制するのは困難であったが,合金中のLiが表面に拡散し窒化物を形成することが示唆された。当初想定していた方法でのTEM観察では不純物の混入を避けることが難しいと判断されるため,バルク試料を用いた実験,分析について検討する予定である。
NH3生成反応については,ガス流通式の装置を作製し,Li-Sn合金の特性評価を実施し,反応温度や反応率に関する知見を得ることに成功した。今後は,この装置を利用して,温度反応条件の最適化や繰り返し特性評価を実施すると共に,その他の合金の反応特性評価を実施する予定である。
以上のことから,2年目においては,計画していた合金作製,特性評価,物性評価等を概ね遂行できたと判断されるが,一部の実験については,研究目的の達成に向け再検討を行う。

今後の研究の推進方策

試料合成について,これまでの2年間で合成した試料の条件を参考に,新たなLi合金の作製を行うと共に,Liと同じアルカリ金属であるNa合金についても作製を試みる。また,TEM及びSEM観察試料として,バルク体(可能なら単結晶)の合金作製を行う。
合成した試料については,種々の熱分析装置を用いて,窒化反応特性評価,窒化物合成特性評価等を行う。Li合金とNa合金の結果を比較し,反応特性や反応プロセスの違いについて知見を得ることで, Li合金の反応メカニズムについての議論を深める。合成後試料及び反応生成物について,X線回折測定を用いた相同定を行う。また,走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)を用いた生成物の観察,核磁気共鳴(NMR)実験を用いた試料中Liの化学状態分析等を行う。特に,SEM及びTEM観察については,バルク試料をFIB(Focused ion beam)加工し断面観察や元素分布の評価を行うことで原子移動のダイナミクスについての知見を得る。
NH3合成反応については,熱重量分析-昇温脱離ガス質量分析装置,及び前年度作製したガス流通式反応特性評価装置を用いて,ガススウィッチングプロセス及び混合ガスを用いた触媒プロセスにおける反応評価を行うと共に,合成を繰り返し行った際の特性劣化等の評価も行う。また,その他のLi及びNa合金を用いたNH3合成実験も実施する。加えて, Li及びNa合金を用いて,NH3以外の固体窒化物(GaN等)合成を試みる。
本研究期間で得られた成果をまとめ,学会発表を積極的に行うと共に,論文として科学系学術雑誌へ投稿する。また,知的財産としての価値が認められると判断される成果については特許出願を行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] リチウムー錫合金を擬触媒として用いた低圧アンモニア合成2018

    • 著者名/発表者名
      山口稔郎,宮岡裕樹,市川貴之
    • 学会等名
      日本エネルギー学会西部支部 第3回学生・若手研究発表会
  • [学会発表] リチウムの特性を利用したアンモニア合成2018

    • 著者名/発表者名
      宮岡裕樹,山口稔郎,市川貴之
    • 学会等名
      水素化物に関わる次世代学術・応用展開研究会 第五回研究会
  • [学会発表] リチウム合金を用いた低温/低圧窒化物合成プロセス2018

    • 著者名/発表者名
      宮岡裕樹
    • 学会等名
      イノベーション・ジャパン2018
  • [学会発表] リチウムの機能性を利用した低温/低圧窒化物合成プロセス2018

    • 著者名/発表者名
      宮岡裕樹
    • 学会等名
      広島大学 新技術説明会
  • [学会発表] Li-Sn 合金を用いた低圧アンモニア合成2018

    • 著者名/発表者名
      山口稔郎,宮岡裕樹,市川貴之
    • 学会等名
      第13 回 水素若手研究会
  • [学会発表] Li合金を用いた窒素分子の解離2018

    • 著者名/発表者名
      山本恭平, 礒部繁人, 中川祐貴, 王永明, 橋本直幸, 市川貴之, 宮岡裕樹
    • 学会等名
      日本金属学会・2018年秋期(第163回)講演大会
  • [学会発表] Ammonia Synthesis Reaction Properties and Dynamics of Li Alloy2018

    • 著者名/発表者名
      Toshiro Yamaguchi, Hiroki Miyaoka, Takayuki Ichikawa
    • 学会等名
      International Symposium on Fuel and Energy 2018
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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