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2019 年度 実績報告書

弾性異方性の大きい鉄合金における微小複合ひずみの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H03422
研究機関東北大学

研究代表者

鈴木 茂  東北大学, マイクロシステム融合研究開発センター, 教授 (40143028)

研究分担者 今福 宗行  東京都市大学, 理工学部, 教授 (00183012)
佐藤 成男  茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40509056)
小貫 祐介  茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 産学官連携助教 (50746998)
川又 透  東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90638355)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード弾性異方性 / 磁気弾性効果 / 鉄合金 / 磁歪 / 逆磁歪
研究実績の概要

弾性異方性の大きいFe-Ga合金単結晶(主にCube方位)における磁場印加により発生する複雑な磁歪をX線回折法等により測定し、それらの測定結果を精緻に解析した。この非破壊的手法による結果を従来のモデルで解釈するのは困難であり、従来のモデルが単純化されていることを指摘した。ここでは、磁気弾性エネルギー等に基づく新たなモデルを提案し、これにより実験結果を再現できることを示した。一方、弾性異方性の大きい鉄合金の多結晶材料における弾性異方性を直接に測定するために、幾つかのGa量の異なる多結晶のFe-Ga合金を作製した。それらの多結晶のFe-Ga合金を、中性子回折法によるその場変形(弾性域での引張変形)の予備的な実験を行い、測定される幾つかの格子ひずみから各合金の結晶方位ごとのYoung率を評価する手法を確立した。詳細な解析は行っているところであるが、<100>方向のYoung率が他の<110>方向等の値に比べかなり低いことが示唆され、多結晶における弾性異方性を示す結果が得られた。また、これらの合金では表面状態の制御が重要であるため、幾つかの処理を施した合金について、X線吸収分光法(転換電子モード)、X線光電子分光法や二次イオン質量分析法により表面状態を評価した。X線吸収端近傍スペクトルから、大気で焼鈍した試料では鉄もガリウムも酸化していたが、低酸素分圧下で焼鈍した試料ではガリウムが選択的に酸化していることを示した。低酸素分圧焼鈍ではGaの表面への濃化も観察され、本プロセスは合金の保護性被膜を制御する上で有効であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

複雑な形状変化を示す磁歪を明らかにするには、合金単結晶を用いた実験が必要であり、それにはある程度の大きさの試料が必要となる。しかし、そのような所定の形状の試料が得られるかどうかが課題であったが、十分な大きさを持つ単結晶を育成することができ、複雑に発生する磁歪をX線回折法等で測定することができた。また、引張変形しながらその場中性子回折を行うには、板状の鉄-ガリウム合金の試験片が必要であり、その加工はガリウムの濃度が高くなるほど困難になる。このため、板状の試験片の作製での困難が予想されたが、加工条件を吟味することにより試験片を作製することができた。その他、熱処理の雰囲気を変えることで合金表面の組成等が変化するかどうかが明瞭でなかったが、本研究で合金表面に形成する酸化膜を変化させることができることが分かった。

今後の研究の推進方策

磁場により複雑に発生する磁歪をX線回折法等で測定する方法がある程度確立してきたので、Fe-Ga合金以外での磁歪測定も可能かどうかを試みる計画である。また、弾性変形における多結晶のFe-Ga合金等の格子ひずみの変化を、中性子回折法で調べる方法も確立してきたので、それによるYoung率等を解析する研究を進めていく。それとともに、幾つかの方位をもつ合金単結晶についても、中性子回折法によるその場変形(弾性域での引張変形)の実験から、測定される格子ひずみを評価する手法を確立する。これらの多結晶や単結晶の格子ひずみに関する実験結果が得られれば、弾性異方性の大きい鉄合金の微小ひずみにおける多結晶の効果、さらに多結晶材料におけるひずみ伝播の機構などについても検討することが可能となる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Anisotropy of Magnetostriction of Functional BCC Iron-Based Alloys2019

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Shigeru、Kawamata Toru、Simura Rayko、Asano Shimpei、Fujieda Shun、Umetsu Rie Y.、Fujita Masaki、Imafuku Muneyuki、Kumagai Tsuyoshi、Fukuda Tsuguo
    • 雑誌名

      MATERIALS TRANSACTIONS

      巻: 60 ページ: 2235~2244

    • DOI

      https://doi.org/10.2320/matertrans.MT-M2019146

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Investigation of power generation mechanism and anisotropy of FeGa magnetostrictive alloy single crystal based on magnetic domain observations2019

    • 著者名/発表者名
      T. Takahashi, R. Simura, S. Fujieda, T. Kawamata, S. Suzuki, T. Fukuda
    • 雑誌名

      Jpn. J. Appl. Phys.

      巻: 58 ページ: 106508

    • DOI

      https://doi.org/10.7567/1347-4065/ab3e60

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 機能性鉄合金の結晶成長と異常粒成長2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木茂、志村玲子、川又透、福田承生
    • 雑誌名

      日本結晶成長学会誌

      巻: 46 ページ: 05

    • 査読あり
  • [学会発表] 鉄基合金の微細組織と逆磁歪特性の関係の解析2019

    • 著者名/発表者名
      古田将寛、高橋巧、志村玲子、川又透、篠田弘造、鈴木茂
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会秋季講演大会
  • [学会発表] ユニモルフU字型振動発電デバイスに搭載したFe-Ga合金単結晶の磁区観察2019

    • 著者名/発表者名
      藤枝俊、高橋 巧、志村玲子、鈴木 茂、福田承生
    • 学会等名
      日本金属学会春期講演大会
  • [学会発表] Surface characterization of functional iron-gallium alloys annealed under different conditions2019

    • 著者名/発表者名
      T.Kawamata、K.Shinoda、S.Suzuki
    • 学会等名
      18th European Conference on Applications of Surface and Interface Analysis

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公開日: 2021-01-27  

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