レーザー誘起前方転写法 (LIFT) はパルスレーザーを用いた直接描画法である.透明基板上に堆積した物質に対して基板裏面からパルスレーザー光を照射することで物質/基板間でアブレーション反応が生じ,対向する基板上へと転写される.同手法を用いることで,様々な材料を任意基板上にミクロン以下のサイズで堆積することができる.一方、LIFTにより対象とする構造体の形状を維持したまま正確に基板上へ転写した例は限られており,付加製造技術の観点からも積層造形への応用が期待される.本研究では,リソグラフィ手法を用いて作製した二次元構造体を対象としたLIFTにより,二次元または三次元構造を任意基板上に形成することを目指して研究を行った. フォトリソグラフィによってガラス基板上に非対称な二次元構造を有する金マイクロパッドを作製し,基板裏面から横断面強度分布が均一なフェムト秒パルスレーザーを照射したところ,元の構造を保った非対称二次元構造が基板上に転写された.しかし,入射レーザー光の横断面強度分布と融点ならびにヤング率の低い金構造体への高エネルギー照射に起因して,転写された金構造体の厚さと形状が不均一となった.金属を対象としたLIFTでは転写時の構造維持のためにヤング率の高い支持層が必要であることが示された. また,LIFTを応用することでサブミクロン構造のドライ現像を試みた,ガラス基板上に光ナノインプリントリソグラフィにより線幅100 nmのラインアンドスペース樹脂パターンを作製した後,膜厚30 nmのクロム薄膜を堆積した.ガラス裏面からパルスレーザー光を照射したところ,クロム/ガラス界面とクロム/樹脂界面におけるアブレーション閾値の違いによって,樹脂表面に堆積したクロム薄膜のみ除去され,100 nm線幅のクロムのドライ現像が可能であることが示された.
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